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Winnyのsomaddesignのレビュー・感想・評価

Winny(2023年製作の映画)
4.5
映画鑑賞後、事件そのものや分からない専門用語がいっぱいあって復習するのが楽しかった。
弁護を担当した壇俊光の著作「Winny 天才プログラマー金子勇との7年半」を読了。
映画公式サイトによれば原案は朝日新聞2020年3月8日の記事。おそらくこの本も大いに下敷きにした映画化なのが伺える(特に金子勇氏のキャラクター造形や壇弁護士とのバディ化してく様とか) あくまで壇弁護士の目を通じた裁判の戦いと金子勇氏の物語になっている。当時のブログに加筆・修正した内容で、読みやすく時系列順に事態が進展してくので面白かった。(金子勇氏に取材を試みたNHK記者の手紙が徹頭徹尾失礼かつ不躾。神経を疑う内容が詳らかにされてて笑うやら笑えないやら)


東出昌大は天才役がよく似合う。
「桐島〜」以来たびたび天才役を演じることが多いけど、才能を持て余してる感というのか、どこにいても違和感がある佇まいが異能の人っぽくていい。今作だと羽生善治役(聖の青春)以来の実在の人なわけだけど、基本一般人なので役作りが大変そう。すごい偏食家だったり、熱中すると周囲が見えなくなっちゃうあたり
何よりあれだけの男前が、ちゃんとパソコンオタクおじさんに見えてくるのが凄い。


三浦貴大は今作の語り部で、観客の目となると同時に難しい専門用語(コンピューターと法律の)を解説もしなくちゃいけない役回り。苦労の末司法試験を突破し、弁護士同士のIT関連の懇親会(勉強会)での何気ない一言が縁で弁護を担当することになったそう。最初こそ面倒ごとに巻き込まれた感あるけど、徐々に金子氏の理解者となってバディ化してく温かな視線が印象的。(熱中すると止まらなくなるトコには最後まで呆れてたっぽいけど)


Winny事件や裁判には直接関係のないけど描かれる「愛媛県警裏金事件」。
鑑賞後、場内が明るくなった途端に隣のご夫婦が「あのお巡りさんどうなったの?」て話し合って、勢い余って調べたらコチラも面白かった。
吉岡秀隆が演じた仙波巡査部長は内部告発の後、拳銃を没取されたり閑職に追いやられたり。裁判で報復人事を認められ、2009年に無事定年退職。2010年に鹿児島県阿久根市の副市長に就任するも、2011年新市長選任により辞任。2013年公開の映画「ゼウスの法廷」に最高裁主席調査官として出演。波瀾万丈すぎて自分で書いててウソみたい。

ついでに調べたところ…
渡辺いっけいが演じた北村刑事のモデルになった人物は、サイバー対策室で定年まで活躍したのち、NECに天下り。現在はサイバーセキュリティ戦略本部のエグゼクティブプロデューサーを務めている。
渋川清彦が演じた伊坂検事のモデルになった人物の方は、大阪地検特捜部の副部長、神戸地検の刑事部長を歴任ののち2022年から大阪地検特捜部の部長に就任。就任に際して「地位や制度を悪用した社会に潜む犯罪を摘発し、真相を解明していきたい」と抱負を述べた。
一審判決の氷室裁判官のモデルになった人物は、Winny事件の他には「京都大学アメフト部レ○プ事件」「宇治学習塾女児殺害事件」などを担当。Winny事件の最高裁判決の翌年依願退官しているが、判決が影響しているかどうかは分からない。

大阪弁護士会での先行上映に際して監督・キャストと共に舞台挨拶に登壇した壇弁護士「女性に奥手だった金子さんの役を東出さんが演じられるとは、なにかの皮肉かと思いました笑」と語る。笑っていいやら、悪いやら😅


22本目
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