鰤鰭

Winnyの鰤鰭のネタバレレビュー・内容・結末

Winny(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

久々に食らった。観終わった後、Winnyが理想的に発展した世界線、金子さんが存命でその後もプログラマーとして活躍された世界線を想像し、とてつもない喪失感に襲われた。こういう技術発展や人類の進歩が人間自身の手によって失われる喪失感に弱い。

Winny事件の少し後にネットに触れた世代として、薄い知識とぼんやりした結果しか知らなかった。この機会にしっかり知るきっかけになってよかった。
ものづくりや技術に関わる人、それを使う人、すべての日本人が知っておかなければいけない歴史だ。

映画として語るべきポイントは、まず法廷シーンの面白さ。そしてWinny事件と並行して警察の裏金事件が進行する脚本の秀逸さ。Winny事件一辺倒にならないから集中力が持続するし、また仙波さんの正義と弁護団の正義が重なる。世の中を良くするために戦う人たちのかっこよさ。

俳優陣もみんなハマってて良かった。主演陣から吹越満のキャラ付け、安定の渡辺いっけいまで。特に、最後に出てきて全部まくる吉田洋の演技すごー。
たまたま関西が舞台なのも、関西弁の軽さや冗談があって、題材の重さに対して鑑賞中そこのコミュニケーションの朗らかさに救われる部分もあった。

結末を知ってるから、途中で「僕もこの裁判に5年かけるんで、金子さんはプログラマー達の未来のためにその後の時間を使ってください。」のとこでもうグッと来た。

劇中、何度も響いて泣きそうになったが、泣かなかった。しかしラスト、エンドロールでご本人の語る映像を見た途端、止めどなく涙が流れ出た。この体験は初めて。技術を利用する未来の我々に向けて、本人の口から語られた言葉。遺した言葉。
ある人物にフォーカスした実話の映画はこうあるべきだと思う。映画にする意味がここにある。映画を観た人の記憶には、金子さんの人物像、言葉、思いが焼き付いただろう。そして自分が何か技術に触れる時、ものづくりに携わる時、金子さんの言葉、信念を思い出そう。

【鑑賞回数】1
【鑑賞履歴】
・2023/5/22 🎞️シネマ・ジャック&ベティ
鰤鰭

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