このレビューはネタバレを含みます
物語としては予想通りの展開の域を出ないので、映画としての評価は厳しい。ただあったことを真っ正面から描くだけならドキュメンタリーにした方が見応えあったのでは?映画にするための/映画にするべき着眼点や工夫があったようには思えない。
東出昌大の演技もなかなか見るに耐えかねるものがある。この人は何年経っても最初見た時からずっと声の質と喋り方のあざとさというネックがまったく変わらないのだよなあ。エンドロールまで見たら金子さんが醸し出す知性を全くキャラに反映できなかったのだなと感じる。
警察の不正の話を被せて、正しいことは何かちゃんと見極めよう、的なテーマを差し込んだのも必要あっただろうか、など。たぶんちゃんと削れば60分くらいにしてスペシャルドラマ枠とかに収められたと思うし、その方が適当な出来だったと思う。
余談1)
個人的に、法に問うべきか困難なラインを考えなしに問うたことに問題が大きかった金子さんの件と、法には明らかに問えないが倫理にもとる行いをした東出の件を考えると、変に重なる部分があるが決定的に異なる2人の配役、キャスティング自体にも気持ち悪さを感じた。映画のクオリティで勝負したいならもっとフラットな配役があったはず。
余談2)
Winnyの問題に関して警察らが対処を誤ったのは明白だが、開発者の責任というか、開発者だからこそ懸念できる領域がある点について、前例が生み出されたことには意義がなかったわけじゃないのかなと感じた。判決のように、事実、つくること自体が罪とは言えないのだから。
余談3)
『落下の解剖学』を見たあとだから、法廷劇をここまでつまらなく、緊迫感なく見ることが本当に辛かった。観客を楽しませるための演出を少しでも盛り込めないのであれば、やはり映画にするべきではなかったのかなと思う。現実の出来事の重要さと、映画としての面白さはまったくの別物だ。