宮本

Winnyの宮本のレビュー・感想・評価

Winny(2023年製作の映画)
4.2
ウィニー事件が勃発し、「国民の1人1人に注意してもらい、対策をとってもらわないと情報漏えいは防げない。最も確実な対策は、PCでWinnyを使わないこと」というようなアホなことを発言した人がいた。後に、その張本人が総理大臣にもなりました。この事件の主人公、金子さんが戦ってきたのは警察の不透明な行動、盲目な政治家もそうだけど、時代遅れな社会でもあったんじゃないかとこの映画を見てはっきりと見せられるし、世界中話題になったこの裁判が、日本のIT技術に遅れを取らせてしまったきっかけにもなった。
アナログ大好きな自分でも、中学〜高校生時代p2p使ってたし、今の30〜40代は絶対聞いたことがあるこの事件を扱うのはめっちゃアツいし、政治的な話はできるだけ避けたいが、今回の作品は邦画の中に稀に見る社会的かつ政治的なメッセージを中心としているので避けても通れない道です。

まず、物語の構成はかなり見応えがある。ウィニー事件の軸はもちろんメインにあって、なんとなくみんなが知っているストーリーを描くわけですが、同時にもう一個、吉岡秀隆さんが演じてる愛媛県の警官の軸も描かれていて、これがまずあまり知られていないのと、最初関係ないと思わせながら金子さんに巡る物語に直結するし、今作の核となるテーマ、そして見せ場になっている。プラス要素のはずだったパートがいきなり超重要だと気づくとき、「うまい!」と言うしかありません。
金子さんの「1人の表現者」としての演出もかなりよくて、久々映画で見る東出さんはやはり素晴らしい、歴史の人物に寄せてはいるけど、決してモノマネではなくて、ちゃんと役を自分のものにしてる感じがさすがです。
そして彼です、自分は役所広司の次に大好きな俳優、吹越満さんは特に秋田という天才弁護士はハマり役。タバコを吹かしてる度に満悦になる自分がいる。
演出も撮影は時にドキュメンタリーに寄せたり、時にサスペンスになったり、政治映画になったり、いろんな工夫をしていて、ただ出来事のなり行きを見せているわけではなく、ちゃんとエンタメにもなってるし、伝えたいこともかなり強めに表現されています。
監督もかなり若い方で、これからの活躍が楽しみです。
宮本

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