あくとる

恐怖のセンセイのあくとるのレビュー・感想・評価

恐怖のセンセイ(2019年製作の映画)
4.5
"歪んだ男らしさの暴走"

ナヨナヨしたオタクっぽい早口の主人公ケイシー。
つまり、いつものジェシー・アイゼンバーグ。
"男らしさ"のカケラも無いケイシー(名前すら女っぽい)は、夜道で暴漢に襲われ重傷となる。
自己防衛の手段が必要と考えたケイシーは、偶然通りかかった道場で"空手"に出会う。
"マチズモ"の極みのような道場で、彼は間違った"男らしさ"に目覚めてしまう。

あまり話題になっていないような気がするが、体育会系組織の厭な面や、行きすぎたマチズモの恐怖を描いた秀逸なブラックコメディだった。
誇張された空手観には批判もあるかもしれないが、この映画が描こうとするテーマには必要な脚色であり、それがこの映画の面白さとなっている。

道場の厳格なルール。
帯による階級社会。
時代錯誤の男性観/女性観。
そして、絶対的な"センセイ"という存在。
"男らしさ"を信仰する宗教組織のようですらある。
真面目すぎる主人公はひたすら"男らしさ"に執着し、センセイの教えを実行していくうちに、どっぷりと危険な思想へ染まっていく。
強さも一線を越えるとただの暴力となる。
"男らしさ"の行き着く先とは。
思わず唸るようなオチの付け方が見事。

男性至上主義への鋭い皮肉が効いた作品だが、ちゃんとユーモアもある。
"男ならメタルを聞く"、"男らしい国はドイツ"等々のステレオタイプな男らしさがひたすらギャグになっていたのは笑えた。