垂直落下式サミング

クィーン・コングの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

クィーン・コング(1976年製作の映画)
2.4
『キング・コング』暗黒のパロディ作品。
フェミニンな主張をしようとしたはずなのにストーリーがミソジニーに染まっていくという本末転倒を絵に描いたようなろくでもない一本だが、本編はそんなこと気にならないくらい超酷い。オリジナルのオス・メスの立場を逆転させた誰でも思いつきそうな発想。そのくせ特撮にエキストラにロケーションにそれなりのバジェットで作られており、故に業が深いと言える。
歴史に残るような名作を撮ろうとする女所帯の撮影班と、その一団の女流監督に主役を張る俳優として見出だされたバカがジャングルに下り立つ。そこでクイーンコングと遭遇し、バカはコングの生け贄にされ、コングは彼を気に入り、首の据わっていないティラノサウルスを殺し、コンドルもどきと死闘を繰り広げ、なんか捕獲されてロンドンに来て、見世物にされるのだがブラジャーを着用するのを嫌がる。大方のあらすじを整理してみた観想は一言、くだらない。
ブラジャーを嫌がるコングの姿をみた婦人たちが、「今こそ女性解放だ!」「ウーマンリヴだ!」と運動を起こすのだけれど、その扱いの適当さが物語の表明する思想として社会的に害悪なレベルなので、本当にろくなもんじゃない。
どうやらこの作品、70年代に製作されて以来、長らく公開されることもなくお蔵入りになっていたらしい。まったくもって正しい判断だ。くだらないし、ろくでもない。
吹き替え版では、主役の声を担当したジャッキーの声の人が、たぶんアドリブで作品の出来にツッコミを入れる。これがなきゃ観ていられないので、絶対吹き替えでみたほうがいい。「ロンドンにはエンパイアステートビルがないからね、そうだビッグベンに登ろうよ!大きい便で決まりだ」が笑いどころ。口が動いていない場面でも、何とかしてこのゴミを面白くしようと可能な限り寒くて酷いことを言ってるので、そこに注意して聞いてみてほしい。