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新解釈・三國志のsomaddesignのレビュー・感想・評価

新解釈・三國志(2020年製作の映画)
2.0
コーエー三國志オマージュなポスターは最高!

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福田雄一作品はコメディの威を借りて、真面目な批判を受けつけない姿勢が苦手。酷評や批判に対して真摯に向き合う気がなくて、「マジメか!」の一言で、批判した側が無粋でバカ真面目なつまらない人っぽく見せて逃げていく作風が見るたびに腹立たしい。(山崎貴作品も)


吉川英治版三国志と横山光輝版マンガ三国志は読んだ程度の三国志知識。コーエーの三国志を歴代楽しみ、普段着にSEKITOBAを愛用するレベルの三国志愛。我ながら深いんだか浅いんだか。


『新解釈』とはいうものの、大まかな出来事は変わらない。波乱の時代を生き抜いた英傑たちを新解釈ってことか。たぶん酒見賢一の「弱虫泣き虫諸葛孔明」に触発されてると思われる。特に劉備が口八丁でええかっこしいのボンクラだったり、曹操が英傑だけどド助平だったり、孔明が変人キャラを自己プロデュース。恐妻家で夫人の知恵を頼りにしてるあたり影響を感じる。旧来の英傑たちの物語から、現代人と地続きの人間のしょうもなさが根底に流れる物語に変えたのは「弱虫泣き虫〜」によく似てる。


そもそも福田雄一監督のコメディ自体好き嫌いがハッキリ分かれるので、ファンなら楽しめるはず。三国志の知識があれば尚面白いけど、なくてもそれなりに面白いと思う。だがしかし福田コメディが苦手な自分には、大好きな大泉洋が延々とスベり続けるのが見ていて辛い。監督曰く「『水どう』の大泉洋を映画で見せる」なら、藤村Dみたいな強権無茶ぶり役が欲しかった。
単に優柔不断で自己中ポンコツ大将になっちゃった。大オチが酔拳みたいで、超強引な伏線回収になったのはちょっと笑っちゃったけど……。

登場人物に有能聡明な人が一人もいなくて、民衆のために戦ってるわりに民衆の困窮や苦労は一切描かれないので戦争バカ同士の話に見える。軍事バカに振り回される人たちが描かれない。
孔明にしても、どこまでも軽薄で好きになれなかった。せめてあのバイトが諸葛均で、兄夫婦から家事雑務の一切を押し付けられる可哀想なツッコミキャラになって物語の推進力となり軌道修正する役になれた気がする。
福田雄一作品常連組も多数登場するので、福田ファン向け以上の楽しみ方が見出せなかった。


三国志の有名エピソードを断片的に並べてコント仕立てを繰り返してるだけで、1本の映画としては骨子がなくて破綻してる。外殻だけあって脊柱がない感じ。映画を通じて言いたいことも、やりたい事もおぼろげすぎる。


三国志知ってる人なら貂蝉を演じるのが渡辺直美って出オチで面白いんだけど、個人的に渡辺直美がブス扱いされるのが理解しがたい。反転して醜女として有名な孔明の妻・黄夫人があの人。時代考証的美人/不美人てエクスキューズのキャスティングに違和感。イマドキこうも露骨にルッキズムな笑いを面白いと思ってるのどうかしてる。

文句はあれど、一見無駄遣いとも思える豪華キャスト勢ぞろいだったり、湯水の如く予算を使ったスケールの大きなバカバカしさetc…近年稀に見る「馬鹿・暇・無駄」と三拍子揃った駄映画として記憶されるかも(褒めてます)


69本目
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