櫻イミト

さすらいの櫻イミトのレビュー・感想・評価

さすらい(1975年製作の映画)
3.5
ヴェンダース監督のロード・ムービー3部作「都会のアリス」(1973)「まわり道」(1974)に続く3作目。

キャンピングカーで西ドイツの映画館を巡る映写機修理屋のブルーノは、ある日ビートルで車ごと川にダイブした男を助ける。男はロベルトといい、妻と離婚した喪失感に駆られていた。 なりゆきで二人同行の旅が始まる。。。

アコスティックギターの劇伴が独特の旅情を醸し出すロードムービー。台本なしで撮影に入り即興で制作を進めたとのこと。その手法がロードムービーの魅力を醸し出していた。映像は1976年制作とは思えないほど洗練されていて、ヴェンダース監督とスタッフのセンスの高さに感心した。スローペースではっきりした物語展開はないが、旅を通して変化していく二人の関係性と人生観の変化が繊細に描写されていて、全く退屈することはなかった。

西ドイツ各地の映画館や旅先で出会った人々との会話から、戦後30年を経た時点での西ドイツの等身大の気分が伝わってくるように感じた。
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