つるみん

さすらいのつるみんのレビュー・感想・評価

さすらい(1975年製作の映画)
4.2
変化は必然だよ。

久しぶりに自分好みのロードムービーを観た。モノクロで3時間ほどあると今でも少し抵抗をもってしまい最後まで集中して観続けられるのかどうかなど心配していたが、そんな心配は無用であった。冒頭から引き込まれてしまった。
まず地方の映画館を巡回して映写機を修理する孤独なキャラクターというのが映画好きを興奮させますよね(笑)別に〝映画〟そのものとの関わり自体は多くないのですがアスペクト比やら映写室の裏側やら『ベン・ハー』やら…ちょっとした部分でニヤついてしまう。そんな彼と共に移動していくのが妻と別れたばかりで常に誰かが居ないと何も出来ない訳あり男。対照的な2人がお互いに無いものを見つけ次第に変化していくというストーリー。まあロードムービーにありがちな設定なのだが、自由度が違う。それは彼らのキャラクター像もそうなのだが何よりモノクロを超えた風景の美しさ。あまりにも自由であり、それはロードムービーの本来のあり方を示している。どうやら本作の脚本や台詞は11週間の撮影で移動しながら完成させていったそうだ。その自由さが、この作品の良さを最大限に発揮させている。
そして何より最後まで飽きなかった大きな要因として挙げられるのは音楽である。これが移動する風景と2人の自由さが合わさり最高の名シーンを作り出している。まさに奇跡のワンシーン。

ロードムービーは移動しながら新しい場所で発見をし、吸収して変化・成長していくというのが定番であるが、本作は完全に原点回帰からの変化を求めるロードムービー。時計の針は進んでいるのに過去に答えを置いてけぼりにした2人の物語だからこそ、最後の「変化は必然だよ。」という言葉の深さを味わう事になる。ラストの映画館のシーンでもそう。

「ずっと見ているからな。」
「やっと調子出てきたか。」

うん、泣いた。
たしかに長くは感じたが素晴らしい映画に出会えたことに感謝。
つるみん

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