おはうち

糸のおはうちのレビュー・感想・評価

(2020年製作の映画)
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中島みゆき『糸』との食い合わせが悪いように見えたけど、流れている場面がギョッとするショックシーンだったので楽しくて退屈しない。いちいち曲がスピーカーから流れている事を示してくる変な気の利かせ方は馬鹿馬鹿しく思う。キスから警察との追いかけっこに繋げる強引な躍動感が良い。

女児が泣いている人に抱擁する理屈を回想で、あるいは抱擁している本人が雄弁に語ってしまうのは情緒がない、説明過多。母親が亡くなったそばから、回想で亡くなった人物を登場させると情緒に欠ける。

俳優が何をしでかすのか分からないので楽しい。どんぐりを投げる反復描写しかり、鷲掴みしたピーナッツのぶん投げとか置いてけぼりにされる。榮倉奈々や成田凌のカラオケシーンとかワッとなる。菅田将暉が小松菜奈を車で追いかけようと勢いよくドアを開けるが、我に帰り閉めた時にはズッコケた。

時勢の切り替わりが節操なくて粗雑。平成表記で年代を表していると思ったら、斎藤工との馴れ初めを説明する為だけに字幕が「1年前」表記になったりとフラフラ。年代ごとの切り上げ方も大胆というか思入れなさそうで、年代ごとに起きた事に関心がない。

これ見よがしに斎藤工は釣りが好きなんですよアピールが強いインテリアの消失から沖縄で釣りしている迄が展開速すぎて笑った。現地住民と共に踊り始めて、笑っている顔をクローズアップにしてスローになっている描写の頓珍漢さが面白いのに再登場しなかったのが悔やまれる。

二階堂ふみが出演していて得した気分になった。彼女が3.11の震災・津波の被害に遭ってから性格が変わったらしい部分で『ヒア アフター』を連想するんだけど、特に触れられないので、その後が気になってしょうがない。

榮倉奈々が10年も付き合ってたのにぃ、と泣き始めたのを急に恫喝する涙目の菅田将暉とか怖いんだか泣けるんだか分からんテンションに戸惑う。音量にビビる。

感情の流れに付いていけないが分からんでもない小松菜奈のカツ丼シーンは、もう少し長めにして良いよ。あそこまで変に引っ張るんだったら完食して欲しさあったよ。

転倒したら、あらぬ方向に自転車が飛んでいく様子は好きですね、作り物らしさが映画らしさで好き。

面白くてイマイチなんだけど、全く退屈しなかった…。榮倉奈々の最短で出産(事後)、闘病描写をこなして人生駆け抜けすぎて凄い。
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