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音楽のsomaddesignのレビュー・感想・評価

音楽(2019年製作の映画)
5.0
原初的な喜びにあふれた傑作!

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退屈を持て余した不良三人組が思いつきでバンドを結成。楽器に触れたことすらない彼らが、町内ロックフェスを目指す。
俳優としても活躍する大橋裕之の漫画「音楽と漫画」を原作に、岩井澤健治 監督が約7年10ヶ月自主制作期間を経て長編アニメ映画化。

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なんじゃこりゃ!
めちゃめちゃ面白かった!
めちゃめちゃ面白かった!

独特すぎるキャラデザインや動きもさることながら、セリフの間がすごい。
長いトコとかぶせ気味の落差が現代的っちゅーか、今までのアニメにないテンポ感で気持ちいい。よく出来たコントを見てるようだ。何度も予想外のところに連れて行かれる気持ち良さがたまらんかった!

個人制作&オール手作業で劇場長編アニメが作っちゃった・作れちゃったことも驚きだけど、もともと監督はプロのアニメーターでもなければ、アニメを志して学んだ方でもないらしい。
ゆえにロトスコープ(実写を下敷きにトレースして作るにアニメ)の方が、作りやすかったそうで想像するだに恐ろしく面倒臭い。

いわゆるプロでアニメ制作の現場からすれば、常識やマナーから大きく逸脱した作り方と出来上がりかもしれないけど、ものづくりの初期衝動見たいのが溢れまくってて素晴らしい。劇中の研二らと同じく、非常識なバンド編成だろうと、音楽の知識皆無だろうと奏でる音の格好良さや気持ちよさに嘘がない感じがすごい。
なんの歌詞もメロディもないのに、陳腐なロックよりよっぽどハードコアだし、なんだかこう…自分にもわずかに残った心の純粋な部分にタッチしてくるような。最後にはちょっと涙すら流しそうになった。

音楽の喜びと想像することの初期衝動に溢れた作品で、執念より緩やかな喜びが目一杯で、粗さはあっても見てて微笑ましい。
クライマックスのフェスシーンは、湯浅政明監督の処女作にして大傑作「マインドゲーム」のクライマックスに似て、溢れるエネルギーが世界を振動させるブリブリ疾走感を連想しちゃった。研二ならずとも泣く。

珍しくパンフレットまで買っちゃったけど、100ページもある上にインタビュー・設定資料・絵コンテ・ロトスコープ作業工程etc…内容ギッチリ。公式ガイドブック並みの充実度で、1000円が実質タダかと思えるほど。買って良かった、観て良かった😄

(余談)
鑑賞後パンフレットを買おうと売店に並んでたら、ロビーに岩井澤監督らしき人がいらして即席サイン会になっていた。あんまり存じ上げない自分がサインを貰うのも失礼かと思って遠慮したけど、思い返すたびに好きなる作品で、やっぱり貰っておけば良かったな😩



8本目
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