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リスペクトのfmのネタバレレビュー・内容・結末

リスペクト(2021年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

ご存知「クイーン・オブ・ソウル」ことアレサ・フランクリンの伝記映画。

アレサと言うと、天才的な歌手兼ピアニスト兼アレンジャーであり、誰しも認める歴史的偉人なのだが、けっこう苦手意識を感じている人は多い。
私もその一人で、アレサが絶頂時に発する金切り声が少々苦手。
とはいえ代表作の「Respect」「Think」「Rock Steady」は好きだし、「Bridge over Troubled Water」「Groovin'」「Let It Be」などのカバーも天下一品だと思う。
「サザンソウルを志向しているのにさほど演奏が主張してこないし、リズムもエグみがたりないのはなぜ?」という長年の疑問は、アレサの意向であることが本作のレコーディングシーンで判明する。ドラムやベースではなく、ピアノを基調としてボーカルが前面に出るよう指示していたようだ。
名曲「Respect」が誕生し、ライブで披露するシーンがハイライト。
スモーキー・ロビンソン、ダイナ・ワシントン、キング牧師、さらにはデューク・エリントンらしき人物が登場するのも楽しい。

黒人ミュージシャンの伝記映画で繰り返し描かれる家庭不和、公民権運動、中毒症状(アレサの場合はアルコール)の話でもあるので、この手の展開を見飽きているのは事実。
「女性に対してリスペクトを持て」という主張はもっともだが、話の構造自体はレイ・チャールズなどの伝記映画と別段の違いはない。
時間の大半はマネージャーの夫との夫婦喧嘩に費やされるため、どうでもいい。
物語の帰結として、母の愛とルーツであるゴスペル(しかもド定番のアメイジング・グレイス)を選択するのは無難すぎてどうも乗れない。
やはり景気の良いサザンソウルを聴きたかった。
彼女の代表曲である「I Say a Little Prayer」が不完全な形で流されるのも不満。

ジェニファー・ハドソンの芝居は素晴らしく、うまくいかない恋愛やヒット曲がでない苦悩で顔を歪ませるアレサと、名実ともに女王になってからの大仰なアレサを演じ分けている。見事。
エンディングでオバマの前で歌ったあの有名なライブ映像がそのまま流されるのは痛し痒しである。
ご本人登場が一番盛り上がるため、ジェニファー・ハドソンのせっかくの好演が…となってしまう。
手堅くて悪くない作品だが、アレサ・フランクリンという最大級の大物を使ってこの仕上がりだと、この手の伝記映画にサプライズを求めるのは酷なのかと思わされる。
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