このレビューはネタバレを含みます
若き日のダニー・ボイルが「90年代英国式ハードボイルド」みたいなものを構築しようとして、奮闘した作品。
ブリットポップで例えるなら、オアシスの暮らしぶりをブラーが描写した映画とでもいうべきか。
イギーの「Lust For Life」がかかる中で街を爆走するシーンは痛快だし、ケリー・マクドナルドは美しいし、画面のルックには一定のクオリティがある。
しかし、これはダニー・ボイルの性質によるものなのか不明だが、ずっと「仏作って魂入れず」的な空虚さが漂っている。
今のA24に通じる、薄いんだか濃いんだかよくわからないノリ。
「イギーをやたら持ち上げているのに、ボウイをディスるとは」とも思う(実際に90年代のボウイは軽視されていた節はあるが)。
とはいえ、主人公が決意を固めてアンダーワールドの「Born Slippy」がかかるシーンが最高なので、「ああ、やはり本作は90年代のマスターピースなのだな」とわからされてしまった。