えくそしす島

ルクス・エテルナ 永遠の光のえくそしす島のレビュー・感想・評価

3.2
【エテルナインパクト】

初監督と主演女優を主軸に置いた劇中劇による"体験型“の作品。同時刻の撮影現場を画面分割で追いながら視聴者を混沌へと誘う異色作だ。

監督:ギャスパー・ノエ
脚本:ギャスパー・ノエ

あらすじ
“魔女狩り“が主題の映画であり、女優ベアトリス・ダル(本人役)初監督作となる撮影現場。主演を務めるのはシャルロット・ゲンズブール(本人役)。当初は和やかに撮影現場での思い出を語っていた二人だったのだが…。

「作品の裏側」

映像作品や芸術全般に於いて、制作における「現場」というのは、古今東西、いまに至るまで非人道的な事も行われてきた側面がある。

作品の質を“向上“させる
という体裁での「各種ハラスメント」

その反面

作品の質を“妥協"させる
ことに繋がる「コンプライアンス(法令遵守)」

質を極限まで引き出す芸術的思考
収益、予算、期日等の商業的思考

本来ならば緻密なバランスが必要な制作現場。だが実際は、プロデューサーから外部の者まで一人一人の思惑が渦巻く。

しかしながら、今作で描かれている「混沌」は、過去に行われてきた現場での逸話や非道な話と比べると、言葉は悪いが"物足りない“と感じてしまった。

「ラストタンゴ・イン・パリ」での撮影中、監督のベルナルド・ベルトルッチと主演のマーロン・ブランドが19歳の新人女優に対し、同意無く行なったと言われているレイプまがいの現場

「地獄の黙示録」での撮影中、その過酷さに監督のフランシス・フォード・コッポラが、心労で てんかん発作 を起こしたり何度も自殺を考えたほどの現場

そんな時代を経てきた数多の制作現場は混迷を極めた。今作のテーマでもある“芸術“や撮影現場の“混沌“を表すのならば、もっと踏み込んでも良かったのだと思う。常軌を逸した現場と完成された作品との“対比"と“振り幅“をもっと描くべきだったと。

今作は51分と短い上映時間ながら、かなり強烈なインパクトも残している。それは、多くの被害者を出した「ポケモンショック」がただのヒーリングに感じるほどの激しい点滅と明滅。苦手な人、過敏な人は、てんかんなどの光感受性反応に注意が必要ダゾ。

冒頭に出るドストエフスキーの言葉
「健康な人には想像もつかないだろう。てんかんの発作の直前には、一瞬 恍惚の瞬間が訪れる。それは全生涯にも値する感覚だ」

事前に過度な点滅描写を知っていたので準備万端。狂犬の異名を持つ私が光を全身で受け止めてやる。

挑戦
 そして直視
  からの爆散
   子犬きゅーん
         Fin