ヒロオさん

犬王のヒロオさんのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
3.9
室町時代を舞台に、異形の能楽師・犬王と、琵琶法師・友魚の若手2人がタッグを組み、斬新な芸能スタイルで都の人気を集めていく話。

能×ロックの新感覚エンターテイメント!

平家物語をロック調に歌う友魚と、それに合わせて奇妙な踊りを舞う犬王、そして彼らにコール&レスポンスをする室町時代の民衆たち。

演出にかなりのクセがあるので好みは分かれると思うが、私は遊び心を感じられて好きだった。
日本古来の伝統と現代的な感性を巧みに融合させており、映像と音楽を体感するだけで満足できた。

独特なテンポ感に引っ張られるあまり、鑑賞中はストーリーに注意が向かなかったが、振り返ってみればストーリーも悪くなかったと思う。
史実を元にしているので、関連する歴史を知ると一段と楽しめる。

以下、調べてわかったこと(自分用)

・能
今から600年前の室町時代に、観阿弥・世阿弥の親子によって大成。
当時は猿楽と呼ばれていた。
元々は猿楽よりも田楽が人気で、足利尊氏なども後援していたが、足利義満が観阿弥を気に入ったことで地位が一転。
以降、田楽は衰退し、猿楽・能が発展した。
本作にも、義満と幼少の世阿弥が登場する。

・犬王
実在の能楽師で、ちょうど義満の時代に活躍した。
観阿弥・世阿弥のライバル的存在で、年齢は2人の間くらい。

・平家物語と能
能は「鎮魂の芸術」とも呼ばれており、平家物語から多大な影響を受けている。
平家物語を題材に扱った演目は80曲以上もある。
犬王と友魚が平家の鎮魂に拘っていたのはこのため。

・壇ノ浦の戦いと三種の神器
本作冒頭のシーンで、箱と共に水に沈められていた幼子は、壇ノ浦の戦いの後、三種の神器と共に入水した安徳天皇。
また、友魚が盲目になる原因となった「宝剣」は、三種の神器の中で唯一海に沈んで行方不明になった。
三種の神器は天皇の権威のシンボルであるため、宝剣の捜索に力が入れられるが、結局は見つからず、伊勢神宮から新たな宝剣が贈られた。
ヒロオさん

ヒロオさん