このレビューはネタバレを含みます
生きるとはなにか、死期を知った男が探し、さまよい、死との隣り合わせに心の重圧がのしかかる、 そんなつらさや悲しさが伝わってきた作品でした。
すごくつらかったのは、
家にいると息子とその妻が「主人公が死んだときのお金はどうしましょうか」と、主人公が幼き頃の息子を思い返し、今一度話したいと思ったところで息子から電気を消すよう言われたり、部屋に入ろうとする前に電気を消されたりといった、
過去へのすがる思いを本人にぶつけられないところがすごく見ていて近くにいるのに遠く感じる、親目線の子の自立をすごくつらく表現されていて印象深いです。
終盤で「子供のために公園を設けることができたのはやっぱり主人公のおかげではないか」と分かる一連の場面が見ていて、
人間の今や自分に対する執着と保守性、過去に対する雑な切り捨て、未来への希望の無さ、
一般人だからこその良くないところが詰まっていて、その後の「主人公はやっぱりすごかったんだ、俺たちも見習うぞ」のとこまで見ごたえがありました。
衝撃を受けたのはラストですね。そんな「見習おう」といったそのすぐ後に冒頭付近と同じく変わらない場面なのを見て「ハッピーで終わらせないんだ」という感想が出ました。
最後まで徹底して人間の本能や良くないところを描き、歯車でしかない死人ばかりのこの世界(社会)で、「生きる」ということの自由や素晴らしさ、その奔放さに、
自分はなんて幸せなんだろうか、この生活や環境が本当に恵まれている、今を生きているんだということをこの作品を通して思わされました。