このレビューはネタバレを含みます
古典の物語をそのまま表しているような感じだけでなく、古典の妖しさ、不気味さ、欲深さが美しく描かれていたのではと思いました。
白黒故に、影や霧の濃さが印象的な場面もかなりありました。
個人的なやつ
・お金を稼いで「妻にこの服を買って見せてみたらどんな反応をするんだろう」のシーンで、想像上の妻が 影の中から(逆光)→目の前の顔の見える明るいところに出てくる→また影の中に消えていく この表現がアナログ且つ効果的に表現できているように思えました。
・屋敷の女とおばばが消えていくシーンで、消えていく先に影がぬぅっと現れていくところがこの世のものではない表現になっていて、古典の世界の幽霊や妖怪っぽさを妖しく表現しているのではと思いました。
・屋敷の騒動から帰ってきてすぐ寝た男に布団をかけてあげる妻、その後ろでは夜から朝になって、徐々に家の壁の隙間から光がさしていくところはすごくきれい
人生初溝口健二監督映画視聴で、なんとなく溝口監督作品の特徴を知っているのですが、この作品を通して僕自身はカットの長さや、被写体との距離感が印象的でした。
この人からの立場ではあっても、この人からの視点という感じはあまりなく、動作を少し離れて・俯瞰したところから見るようなカットが多い印象でした。
・侍(武士?)になりたい男の妻が別の侍に無理やり連れ去られるところとかは、当事者からのではなくその現場を目撃してしまったような位置にあり、「とても助けられる状況に無い」表現になっていると思いました。しかも長回しでなおさら。
・屋敷で従者?が廊下を歩いているところも俯瞰で映され、廊下に置いてあるろうそくによって障子の前を通るたびに障子に上半身ぐらいの影ができていくところが、足元しか実物は見えないけど障子には影で上半身が映る、何気ないシーンですけどなんか印象に残りました。
古典世界的な人間の欲深さ、突然の機会、愛情、妖しさがそのままに描かれ、シームレスな繋ぎや演出・白黒で美しく描かれた作品だなと思います。