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キングメーカー 大統領を作った男のumisodachiのレビュー・感想・評価

4.1


金大中とその参謀だった人物の実話をベースにした政治もの。

1961年。薬局を営んでいたソ・チャンデは、理想を高く掲げる新進の野党候補キム・ウンボムに心を動かされ、自ら選挙参謀となるべく売り込みをかける。チャンデの戦略によりどんどんと躍進していくウンボムだったが、手段を択ばないチャンデと理想主義者のウンボムとの溝が少しずつ広がっていき……。

めちゃくちゃおもしろーい。ちょっと戯曲っぽいというか、冒頭の寓話の利かせ方やヒリヒリする会話の緩急など、Dramaっていう感じがした。逆にいうと、過剰なほどに芝居がかっているということでもあるのだが、それも不自然に感じないくらいストーリー展開がおもしろい。

たとえ倫理的判断を犠牲にしたとしても手段を択ばないチャンデ、あくまでも理想を追求する人道主義者のウンボム、というわかりやすい二項対立だと見せかけて、実はもっと全然奥行きがあるのが上手い。チャンデは確かに勝つために強引なことばかり思いつくが、その根っこにあるのはどうあっても「ウンボムの理想に共感したから」という事実なわけだし、ウンボムはチャンデのやり方を十分に理解した上で利用していて、しかも「利用している」ということを自覚している。アウトプットが真逆だとしても、内面では2人は鏡合わせであり、何なら同一化していると言ってもいい。清濁併せ呑んで突き進み、ときに残酷な決断を下したとしても、「世の中を良くしたい」という想いだけはおそらく2人ともブレていないから、熱い。

さらに、チャンデはその想いと事故承認欲求の間でも苦しむ。誰かのために尽くすことと、自分自身が評価されること。不毛な天秤だとわかっていても、振り切れないジレンマ。イ・ソンギュンの心の内を明かさない絶妙な演技が見事だった。

最後はああなるのだろうということは分かりきっていても、やはりジーンと来てしまうつくりも上手い。この映画は完全に脚本の勝利というか、脚本がおもしろいってやっぱり大切だな!と思い知らせてくれる。

韓国映画は光と闇という二項対立を軸にしたストーリー構成や、2人の人間のコントラストを全面に押し出した作品作りが異様に上手いよねー。なんなんだろうこの上手さは。






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