このレビューはネタバレを含みます
やっぱり、ディズニーよりピクサーの方が好きだな。
なんとなく輪廻転生の話っぽく感じていたんだけど、落ち着いて考えると少し違う……のかな。そもそもキリスト教圏でも輪廻の発想があるのかと意外に思って(実際、生まれ変わるという教えはないみたい)いたのだけど、22番を含む新しい魂たちに、前世があるようなことは言われていなかった。見てて誤解する人多そう。
世界的な知名度を持つメンターたちが、これから新しい生を授かるといった話もなかった。だから、あの青白い魂たちはどこかで生まれて事前研修を受けている新品で、何周目かのリサイクル魂ということではない様子。
あの魂たちの出所や、この研修を管理する少し気味の悪いカウンセラーたちについては、説明されない。敢えて伏せているのか、時間の関係でカットされたのか、人間の理屈では計れないなにかの意思だから説明できないからなのか、あの清浄な出生待合所は少し不気味。
ジョーと22番がドタバタしたり、それまで敬遠していた物事を克服したりしながらという展開は、既視感というより王道の成長譚であったり人間讃歌であったりするので、これはもう安心して見ていられる。
ディズニーほど漂白された(人種ということではなしに)世界観でもないし、アメリカのアニメーションを見るときいつもは気になるクド過ぎる表情も、22番のおかげかそれほど気にならなかった。
ジョーの中に入ってしまった22番の突飛な行動もやり過ぎてない感じがいいし、鑑賞時のストレスがとても抑制されていて、とても優しい物語に感じた。どれもこうあってほしい。
それから、音楽。
詳しくはないのでよくは解らないけれど、とても素敵だった。ストーリー上も重要な役割を果たすし、劇音楽としてもカッコいいし、演奏シーンがとても良かった。ジョーは男前じゃないけれど、演奏中はとても楽しそうで、輝いていた──というとても情報量の多いものが、CGアニメーションでなんの不足もなく描かれていて、とにかく感心。
それから、少しばかりわざとらしさもあったし、理想主義的なところもあったけれど、登場人物たちが語る『人生』は、もちろん大人の鑑賞を意識してのものだろうけれど、むしろ子どもにこそ感じてほしいポイントだと思う。いまはなんだか解らなくとも、「これ大事な言葉っぽい」ぐらいでも、糧としては充分だ。
コロナ禍のこととは言え、劇場公開がなかったのが残念な作品だと思う。
ところで、アメリカのコミックやアニメーションの猫って全然かわいく見えないのなんでだろうか。