都部

ソウルフル・ワールドの都部のレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
3.7
作品を通した結論の自己啓発的な無難な落とし所は正直どうかと思うが、作品それ自体の味わいは感覚的な筆致であるから、たしかに心に波紋を引き起こすもので、夢敗れた大人が改めて他者を通して自分の人生の価値を再認識することで変化を得るというプロットは好ましく思う。

『こんなはずじゃなかった』が、今を生きる大半の人々の口癖であって、我々同様に自分のままならない人生に不服を抱くジョーが自分の人生の客観的価値と直面する場面から本作はなかなかヘビーだと分かる。それでも自分の人生には意味があるはずだと答えを追い求める彼が、現世での生誕を拒絶する22番との交流を経て、人生の普遍的な美しき『なんてことなさ』を受容するプロセスは丁寧であったから結末は惜しさを感じた。

あの境界を超えることなく、それが自分の人生であると今回の件を通して受け入れる方が話としてはしっくり来ると思うんだけどな……。

産まれる前から個人の性格と生き方は決定する──そんなスピリチュアルな世界観を弄びながら、魂の入れ替わりコメディに興じる姿は楽しく、その中で生きることを知らない22番の奔放な振る舞いがジョー個人の人生の多層的な側面を明らかにしていく流れは王道だが、産まれる前の魂が人生の価値を知って……という下りは胸にくるものがある。

日常の中の一瞬一瞬の悦びを表現する方法として、それを捉えた写実的な映像美とピアノの伴奏による共鳴が描かれるのは明確に大人向けのそれで見応えのある作品だった。
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