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ソウルフル・ワールドのcrispのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
4.7
友人にオススメされてずっと観たいと思ってて、でも配信系で見ようと思っても2500円くらいで購入しないといけないし、って感じで見れてなかった。そんな時に上映!めっちゃラッキー!映画館で見れるなんて!

PIXAR作品を映画館で見るのは久しぶりで、映像の綺麗さ・リアルさに驚いた。え?実写?ってなる部分多々。人の動きとかも細かいね〜〜色使いも。

前情報として「結構スピリチュアル」みたいなのは聞いてて。
そこが気になっていた。「PIXAR、ディズニーが描くスピリチュアルってどんなだ?」

魂の行き場、生まれる場、みたいな世界。
アーティストがゾーンに入った瞬間、瞑想してゾーンに入る瞬間、
そういう魂が、あちらの世界に入っていってる、って描き方もおもしろかった。
「ゾーンに入る」とか、世間でなんとなく表現されてることをイメージとして見せてくれた感じで興味深かった。

もともとは生き生きしてた魂が、義務感やプレッシャーで押しつぶされそうになってる状況、それをあの世界では砂漠を彷徨ってるモンスターになってるのも、うんうん、と納得だった。

一番印象的だったシーンはやはり、主人公が長年の夢だったステージを終えた後のシーン。全ての夢が叶った瞬間。
「これから僕はどうなるの?」
「また明日も、同じことをするのよ」
「...夢が叶ったら、もっと違う感情になるのかと思ってた」
みたいな会話。ここもすごく納得した。

夢・目標は、すっごく素晴らしいしパワーをくれるのだけど、「点」なのだ。実は、その「点」に至るまでの過程・渦中の時間=「帯」も含めて、
もう夢の時間を味わってるのと同じこと、だったりするのだ、ということ。
(言葉にするのむずいけど、感覚的にすごく納得したのだ)

その後の会話。
ある魚は言った
「どうしても海に行きたいんだ」
「でも今も水の中にいる。海も同じだ」
「海じゃなきゃダメなんだ」

この映画全体を通してのメッセージ、それは「今、生きてること、とは」
生きていると、
生きてることに意味を見出そうとするし、
目標のために頑張ってないといけないような気がするし、
目標を達成すこと・夢を叶えることこそ、生きてる意味だ(叶えていない今は、意味がない)などと、
無意識のうちに、そんなことに縛られて生きていて。

主人公が、念願の夢が叶った後、おそらく虚しさ?を感じていた。
自分が今までずっと頑張っていたのは、ここに達成するためだったんだよな...嬉しいけど、そこまで、幸せ!!!!!!!!!!ってわけじゃないんだな。みたいな。
夢・目標はもちろん大事だけど、過程が「苦しくて辛いだけ」だと、叶った時虚しくなる、んだと思う。
夢を叶えるには努力が必要だ。でも勘違いしてはいけない。
「楽しいからしんどいことも頑張れる」と
「楽しい気持ちになるために、今はしんどいことも耐えて頑張る」は
違うということ。

後者だと、
主人公がそうだったように、夢が叶ったとき「あの辛さに対してこれぐらいの喜びか」って虚しさを感じるのと、
次の目標を掲げようとするときに「ああ、また辛い努力の日々をやらなきゃいけないのか」って、しんどくなってしまう。続かない。

人間、苦しいことからは自然と足が遠のいてしまう生き物だ。
逆に、楽しいこと、心地いいことには無意識にやってる。
だからきっと、それで良いのだと思う。
現状に満足しろ!今に感謝して生きろ!とか、そういう綺麗事を言いたいわけではなく。

主人公、最後のセリフ
「今を、精一杯生きる」
これは「今度は、どんなときも、過程を楽しんで生きてみるよ」っていうふうに私には聞こえた。
目標・夢ができた瞬間に、それはもう、夢が叶っていることが始まっている、というか。スタート地点からゴール地点までのパック売りなのだ。
ゴール地点だけ食べて「美味しい」ではないのだ。
スタート地点の味も含めた、ひとつの「夢」

だから「今」は、どんな今であれ、夢の最中。
もう海と同じ、水の中にいるのだ。
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