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ブルーバレンタインのcrispのレビュー・感想・評価

ブルーバレンタイン(2010年製作の映画)
5.0
10年ぶりに鑑賞。
あ〜〜〜〜〜〜〜。やっぱ好きだ。
再度見て良かった。それを確認し、噛み締めた。

一瞬として、飽きる瞬間がない。
表情、感情、セリフになってない部分に集中させてくれる映画だ。
見てて気持ちいい。
細やかであるけれど、俳優陣の実力あっての潔さも感じる。

ゴズの作品の中でも、このディーンのゴズがとても好きだ。
もちろん、朝から酒浸りで仕舞いには妻に暴言、暴力沙汰になってしまう姿は魅力的とは言い難い。でもそれ含め、昔のようにいきたくてもいかない一人の人間の葛藤、もどかしさ。
ロマンスだけではない、嫌な部分・憎らしいと思う感情を含めた、そんななんともいえない「愛」と「情」。
それを、この映画は終始絶妙に描いている。俳優陣は演じ切っている。

この映画は終始、セツナい。
輝きと苦しみ、両方の愛の話を見ることになるからだ。

昔の2人の姿、特にゴズ演じるディーンがすごくすごく魅力的だ。おそらく私にとって、映画、ラブストーリーものに出てくる男の中で、ディーンはかなり上位なんだろな。ディーンうわー好きだーとなる部分多々。
個人的にめっちゃタイプなんだろう。
ああいう、気になると思った瞬間の行動力。
辛い状況には全力で寄り添う姿、相手を楽しませようとするサービス精神。頼れる。この人とならこれからの人生、大丈夫だ。
当時のシンディがそう思った瞬間、ってのが、セリフはないけれどひしひし伝わってきて。そういうセリフはないけれど伝わってくる感情、ってのがこの映画には詰まってて。なんともセツナい。

未来(現在)の彼らはより一層、
セリフになってる言葉よりも、言葉になりきらない彼らの表情の方が「真実」だっただろう。言葉にすればするほど、すれ違い、ぶつかり。
そうじゃないのに。
どう伝えれば良いんだろう。
自分の感情が、言葉が、固まる前に相手に投げつけてしまう状況。
そういうのって、あるよなあ。
ディーンのシンディを思う気持ちと、
シンディのディーンを思う気持ちが、
どちらも愛しているのに、それだけでは、いやそれ以外のことが作用してか、うまくいかない時がある。

その、愛情があるのに上手くいかない末期の状況を、ここまで絶妙に表現できている物語が、なんとも言えない。

ゴズも、ミシェル・ウィリアムズも、上手いなあ。
「俳優は、感情のアスリートだ」とアルパチーノが言ってたけど彼らの演技はほんと、アスリートの技術を見てるようで気持ちよかった。

どの瞬間も見事なのだけど、個人的に
飼い犬のゴールデンレトリバーが死んで庭に埋めたあと、本気の男泣きをしてるあのディーンの演技。泣きすぎて鼻水出過ぎて、鼻呼吸出来なくなってる感じのあれ。あの泣きの感じって、本気で泣かないとあの感じ(もう鼻じゃ何も吸えない鼻パンパンの感じ)にならないと思うんだけど、結構泣いたのか?あの少しのシーンに、どれくらいの時間をかけてあの泣きにもって行ったのか?!
とか、シーンは一瞬だったが、巻き戻して何度か見た。

埋める時にはなんてことなく「作業」として埋めてる感じだったのに、そんなに悲しんでたんかい、となるのも愛おしかったし(ディーン好きだ)背後から抱き寄り添うシンディ、二人の姿がよかった。
争わず仲良さげそうに見える瞬間は切なく嬉しく、どうかいつまでも仲良くいてくれ、と願った。

自分の実の子どもではないけれど、すごく愛して子煩悩で。
でも本当は自分の子どもも心の底では欲しいと思っている、とか。
せつないね〜
でも、今の夫の状況で2人目ができることは、気が進まないシンディの気持ちもわかるから切ない。愛してないとかじゃない。そういうことじゃない。

愛したいのに、前のように愛せない。
愛してるけど、前とは同じとはいかない。
自分のせいなのか、相手のせいなのか、誰のせいなのか、なんなのか。それがわからなくて、わかってるけどどうしようもなくて、もどかしくて、腹が立って。
でも、愛している。変わらず、愛している。
そして、愛を通り越して憎くなる。

その、心の描写が完璧な映画だ。

最後、あの離れていくシーンも切なすぎる。
本当に切ないでしかない映画だが、すごく愛すべき映画だ。
また観るだろう。これからも観るだろう。

アスリートたちが感情を詰め込んだ、作品。
かっこよかった。

p.s.
ゴズの禿げ方、ほんと絶妙だけど、監督の禿げ方を参考にしたって話
いいよな〜〜笑
絶対禿げ方注視する時間あるもんな、この映画。
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