持て余す

愛なき森で叫べの持て余すのネタバレレビュー・内容・結末

愛なき森で叫べ(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

椎名桔平がニヤニヤしているの大好き。

北九州監禁殺人事件をモデルにした映画なのだそうだけど、実際の事件とはかなり遠いみたい。マインドコントロールとか通電で罰を与えるとかのパーツだけ借りてきた感じで、実在の事件とはなんかこう雰囲気が違うように思う。

実在事件の主犯も虚妄と誇大に包まれた病的なナルシシストだったようだけど、椎名桔平演じる村田丈はもはやなにが嘘かも解らないほどの病的というより魅力のあふれるファンタジックな存在になってしまっている。なので、やることなすこと最低な人間なのに不思議なくらい嫌悪感が少ない。

この詐病の犯罪者は本当に口先だけの人間で、それが突き抜けている。だから、あれだけ猟奇的な事件を引き起こしたのに、実際には手を下していない。主犯ではあるし、暴行や詐欺はしているけれど、ひとりも殺さずに口先だけ大量殺人事件に導いたことになる。

ところが、巻き込まれていた筈のシンが元から人殺しだったせいで、その辺りがややブレる。中途で離脱したジェイに対しても支配力が足りないように感じられたので、村田丈の手管は主に女性に効果的なのかと思えば、これも美津子の告白で空転してしまう。最も村田に心酔していたように見えた美津子までもが、解った上でフリをしていたという。

王様陥落。
盛者必衰の理だ。
驕れる者も久しからずだ。

でも、銃口を向けられて必死ながらもヘラヘラしたまま逃げる椎名桔平は素敵だった。どんな物語でも悪はああであって欲しい。この手の悪いヤツに清廉な潔さなんてあって欲しくないし、ゴキブリ並みに醜悪であって欲しい。なので、あの結末部には納得が強い。

それにしても鎌滝えりである。
この物語、椎名桔平演じる村田丈と満島慎之介演じるシンも凄かったけれど、なんと言っても美津子役の鎌滝えりだ。こんなすごい人がいままでそれほど有名にもならず(有名じゃなかったよね?)に埋もれていたのですね。いい役なのは確かなのだけど、やり切った感がビンビン伝わってきてただただ感動。

全体に歪な出来栄えの映画だったけど、演者にも、グロテスクな拷問にも、凄惨な事件にも、箍の外れた登場人物にも、迫力がありました。堪能。

ところで、序盤の女子学生たちの演劇喋りな感じにはどうしようかと思ったよ。
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