なるほど。観てて舞台用の台本が元なんだろうなぁということは強く思わされました。
コミカルなやり取りも、どうでもいい会話から裏の事情が匂い立ってくるところも、時々とんでもなくきつい言葉が飛び出してくるところも、どれもがいわゆる映画とはニュアンスが違います。
「物語を見せる」よりも「役者を見せる」ことを重視している感じがして、その辺はとても舞台的だと感じました。
ただ、監督も役者もスタッフもこの舞台劇をしっかりと映画に仕上げています。
特にすごいと思ったのは、グラウンドの様子を一度も写さなかったところ。
映画なら試合の光景を描き出すのは簡単です。でも、この映画はそれをしない。
舞台ならではの良さがあるところはしっかりとそこを生かす。
それでいて、会話の場面で話していない人物をアップにしたり、ブラスバンドをじっくりと撮ったり、映画で良さが出るところはちゃんと映画として写す。このバランスの良さは、とても心地よく感じました。
出てくる高校生たちはみんなキラキラもしていなくて、どこか醒めてもいて、人との距離をつめるのが上手くありません。
だから会話もすごく上っ面なものになるし、それでいて、距離を測るための相手への気遣いだけは満載という感じになってしまいます。
それだけに、会話のなかのちょっとした部分が引き金となって、時として真正面から向き合わなければならなくなったりするのです。
その臆病さと緊張感にドキドキさせられ、向き合って初めて生まれてくる「ほんのわずかなキラキラ」に感動させられます。
クライマックスの気持ちよさったらありません。
試合の山場と同時に迎える、彼らのキラキラは、大声で応援をする姿に全部込められます。
このシーンのなんと地味で、それでいて、なんと感動的なこと。
彼らに全力で拍手を送りたい気分に、僕はなりました。