えりーぜ

オリバー・ツイストのえりーぜのレビュー・感想・評価

オリバー・ツイスト(2005年製作の映画)
3.3
救いがなく、救われない。
一見すれば、どんな環境でも善良さを失わなかった少年が報われるという、教訓めいたお話。でもそうじゃなくて、罪や善悪のありようについて考えさせられるお話。
罪を犯さなければ善人か、善良な市民は何の罪もないか。
孤児院や修道院で育つ子どもが劣悪な環境でひどい仕打ちを受ける描写はよくある。そこから逃げ出す話もよくある。逃げ出してどこへ行くのか。子どもが親を選べないように、育つ環境も選ぶことができない。
優しい言葉よりも一杯のスープを。金銭の施しよりも生きる術を。選んだのではなく選ばざるを得なかった人々。
神への祈りも善良さも役には立たない。生きることすら苦痛でも耐え忍ぶ。救われた身に感謝を、救えなかった命に涙を。後悔と懺悔を生涯背負っていかねばならない。