都部

映画ドラえもん のび太の新恐竜の都部のレビュー・感想・評価

2.8
リスペクト元の恐竜及び恐竜2006に引き摺られず、キッパリと一線を引いているように思える物語の筋書き自体は好感が持てる。また未発見の新恐竜を自宅やジオラマで育てるというセンス・オブ・ワンダーを得られる画は、実にドラえもん的な童心を煽る立ち上がりで良かった。

本作の大きな特徴として敵役の不在が挙げられるが、恐竜の不回避の絶滅を巡るタイムパトロールとの若干の対立構図は珍しく、子供向けとはいえSFとしてのそうした問題提起が物語を盛り上げている。感情論に任せてひみつ道具を強奪する形で歴史を書き換えようとするのび太の言動は強情だが年相応のそれで、最終的にひみつ道具を駆使することで絶滅を合法的に回避しようとする流れを通した歪な我儘の肯定は若干気になるものの話の風通しを良くはしている。

とはいえ歪である以上、その問題提起に対する回答は杜撰で思えば本作はSF的な筆致と作品としての命題の噛み合わせが終始悪く、結果的に話の本質に対するピントがボケたような所感を自ずと与える。

出来ないことを出来るようにする為に努力することの意義が語られる本作だが、これを構成する逆上がりが出来ないのび太と飛べない翼竜を一緒くたに語ることで生じる根性論の矯正的な肯定───やれば出来る、やろうとしなければ出来ない、つまり出来ないのは本当にやろうとしていないから──は眉を顰める物で、その為にのび太がやや強情な態度でキューに迫る場面はやり過ぎであるように思う。

親子向けの映画を形作るにあたり、昨今のドラえもんは物語に対する親の共感要素として登場人物に親の視点を兼ねて持たせる働きがあるが、食べ物の好き嫌いに対する苦言や飛翔の仕方に対する叱咤が本作ではそれにあたり、その役目を担うのび太が成長と育成という違和を抱かせる二面性を帯びているのは気になった。

また進化論を通しての多様性の肯定が本作のテーマだとインタビューなどで語られているが、本作の結実として描かれるのはただの結果論であり、周囲に馴染む為に相応の努力をするという展開はむしろ極めて保守的で多様性からは程遠い内容とも思える。別にそういう物語じゃなくなっていいのだけれど、そういう物語を作ろうとした上で出力されるのがコレというのが問題で、作るならしっかり作って欲しいという不満は残る。

あとピー助が作品のリスペクトとして登場するが、脚本の構成上 ノイズで要らないシーンにもほどがあるし、キッパリと過去作に一線を引いてる癖に過去の栄光にあやかろうとするような態度が気に食わない。あの無理やりな登場はどう解釈しても良いのだろうが、解釈を観客に委ねてそれっぽいことをただやってだけなのはどうなんだよ。
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