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少年の君のもーーーのレビュー・感想・評価

少年の君(2019年製作の映画)
4.5
受験を控えた女子高生、街の不良少年の話。

いじめや暴力の最も恐ろしい部分を大々的に描写せずとも、その残酷さを伝える構図。
登場人物の表情で語るところ。
おしゃれなカットもあって良かった。
主人公2人の役者さん達もとても良かった。
(年下にしか見えない周冬雨が、実際には易烊千璽の8個上とは、何事・・・!)
もう街中の2人の距離感で涙が出てくる。


社会は人を数字で判断し、大人もそれに苦しむ。
落ちるのは早く、登るのは体力がいる。
そんな大人からの期待、
そんな大人を見て抱く希望・・・。
玉突きのように圧力が次々と押し出され、どこかで誰かが加害者にも被害者になる。
手を差し伸べて助けようとする誰かも、もがきながら生きている。
そんな残酷と言える世の中での最善とは。
あの2人には幸せになってほしい。
映画の中のキャラクターの幸せをここまで願ったことは初めてだった。


そんな事を思いながら、自分の記憶も蘇った。
反省や後悔、そして誰かからもらった優しさ。
色々な想いが駆け巡りって、まるで自分も主人公達と一緒にその苦しみと少しの安堵を味わったような感覚になった。
映画の中の2人から「あなたはどんな幸せを求めるか」と問われた気がして、エンドロール後は呆然としてしまった。
正直良い気持ちではなかったし、なんなら泣きすぎてちょっと具合悪くなったけど、この感覚は忘れないようにしようと思った。


本当は映画館で観たかった作品だけど、映画館だったらティッシュ足りなかっただろうし、なにより終わった後席から立てなかったと思う。
そう言う意味では家で観て良かった。

あとあの、タクシー運転手の息子は幸せになって欲しいなぁ。
あとあの、タトゥーのデザイン好きだなぁ。

そして最後に、政府の取り組みのところは、あの部分を入れないと中国で上映できなかったのかなと思うと、これまた複雑な気持ちになるのであった・・・。