若きアーナンドに「この学術誌は論文が掲載されれば、その後もずっとタダで届く」と教えてくれた、大学図書館の警備員さんがナイスプレー過ぎる。そのときに抱いた夢は叶わなかったけど、そのときに灯った希望は彼の心をずっと燃やし続けたのだから。
どんな勉強法より参考書より教育者より、「学びたい」「知りたい」という意欲に勝るものはない。知恵も知識も、真に身につけるために必要なのは才能じゃない。自分の力で自分の人生に引き寄せられれば、知性を得ることができる。
ITT(インド工科大学)合格を目指してそれを実践する、子ども達とアーナンド先生の授業風景がとても楽しい。入射角・反射角など教わったことで成敗するのも最高。
塾の存続、つまり自分達の居場所をかけたエクセレンスとの戦いの場で、あんなに怖気付いてしまって実力を発揮できなかったのに、自信という武器も手に入れたことで何倍もたくましく成長した彼らを痛快に表している。
それにしても単なるチャランポラン男かと思ってたら、実は悪者だったなんて!ああいう奴が一番タチ悪いよな〜。お父さんの気の毒な姿まで思い出されて、イラつき倍増よ。
分かりやすい懲悪に、下剋上、賢い美女、兄弟の絆、もちろん歌あり踊りありの、しっかりがっつりインド映画。もちろん長い!なにしろアーナンド「先生」になるまでだけでも1時間近く経過するからね。ただ、それだけじっくり見せるからこそ「30人中30人」の場面での感動が増すのも間違いない。
ただしイマイチポイントもあり。まずは無料塾に集まって来る子ども達。あの階層では、彼らのような年齢なら家計を担うことを間違いなく期待されているはず。手に入るかどうか定かでない将来性より、目先の労働力確保のために入塾を阻止する家族が少なからずいたのではないかな。
父親から逃すように家を出させてくれた母親はそれに近い描写ではあったけど、もう少し彼らの家庭における過酷さが描かれていてもよかったかな、と。
それから、実話ベースだから仕方ないとはいえ、「無料」塾というのがどうしても引っかかる。貧しいから授業料を取らないというのはまだ分かるけれど、それなら教室や寮を作るところから参加したり食費の工面にも協力したりするべきでは。成功した卒業生たちが様々な形で塾を支えていく、というのでも素敵だな。
教えるという行為は無形になりがちだからこそ、教えることにも教わることにも価値があるものとして、丁寧に扱ってほしい。
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