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ゾンビ-日本初公開復元版-のmasatのネタバレレビュー・内容・結末

ゾンビ-日本初公開復元版-(1979年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

1979年の春手前、日比谷の有楽座の大画面で観た本作は、異様だった。

小学校五年生だったと思う。映画好きの友達・武田くんと、ヘラルド映画の見事な宣伝に乗せられ、“肉をくれ、もっと新鮮な肉を!”とクラスで悪ノリし、担任の横山先生に怒られた事を思い出す。「チラシには残酷と書かれています、小学生の見るものではないですよ」と言われ、その「残酷」というワードにさらに魅かれ、残酷ってどんな事?とより興味津々になった。

巨大な大画面に展開するそれは、予想外にカッコよく、予想外にどんよりさせるものだった。
ゴブリンのプログレ・ロックのノリ、おぞましい特殊メイクの威力、鮮烈な展開に興奮した。やがて気付く、メインキャスト4人の実は“虚な瞳”・・・ラストも予想外に不確実なエンディング。
この塊を投げ付けられ、振り回され、ヘトヘトになって、さらに随所に感じる“何か”に、異様さを感じ、オモロい!と感じつつ、どんよりと日比谷を後にした。

人間の敵は人間、消費社会への警鐘など、小難しいエッセンスは濃密だが、とにかく心を打ったのは、
“この世の終わりが近づいている”という諦めに似た人々の瞳と、そのダークグレーな世界観だった。

そのトーンは今なお鮮烈であった。
それどころか、この緊急事態ゾンビ宣言に揺れる世界は、今こそリアリティを増して迫ってくる。
ヘリコプターが飛び立った朝陽の方向には、ニューノーマルな世界が構築されているのだろうか?
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