イチロヲ

尼寺(秘)物語のイチロヲのレビュー・感想・評価

尼寺(秘)物語(1968年製作の映画)
4.0
古寺の伝統を守ろうとする尼僧(藤純子)が、自身の性観念と対峙していく。開戦直後の京都を舞台にして、仏道を選んだ女性たちの不文律を描いている、東映ピンキー作品。

尼寺に現れた障害持ちの青年(津川雅彦)と無邪気な性行動にひた走る小間使いの少女(大原麗子)が刺激剤となり、主人公が性の営みの乱反射に直面してしまう。尼僧役の女優が頭部を露出しないのはご愛嬌。

尼寺の内部を異空間のように描写しながら、女性の在り方と僧侶の在り方のシーソーゲームを描いていく作風。「僧侶=仏に縋らないと生きていけない人間」を暗に示すことにより、寺院と精神病棟の表裏性を含ませる手法が面白い。

端役では、尼僧に枕営業を強要する高僧(若山富三郎)と、市松人形を自分の分身にしている尼僧(三田佳子)が、特殊極まりない個性を放っている。東映成人映画路線の前夜祭的な位置付けとして、純粋に楽しむことができる。
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