Benito

快楽を貪る本能のBenitoのレビュー・感想・評価

快楽を貪る本能(2018年製作の映画)
3.5
【 フランス語圏のカナダ映画を観る 】

*カナダで唯一フランス語が公用語のケベック州が舞台。ロケはモントリオール。
*皮膚科学を研究する女性科学者が主役、性的刺激による皮膚の変化を見る。
*欲望を抑えれないが家庭は守りたいという矛盾した葛藤を主人公は抱えている。
*女性監督 Renée Beaulieuはケベック出身、薬剤師を辞め映画学校で学んできた。
*鑑賞する際は、音響に注目したい。

原題は
「Les salopes, ou, Le sucre naturel de la peau」という、フランス語。
→ Les Salopes: 痴女(たち)
→ ou, Le sucre naturel de la peau:肌の糖分。邦題とは、意味がやや違うけど。

映画の中の台詞に '肌の糖分が血管で発酵し、僕は迷子になる' という黒人学生の書いた詩を読む主人公マリークレールがいる。彼女は風呂の中に沈み、エレクトロビートと不穏なコーラスが時々流れている。そしてマリークレールは決して美人でもなく、モデルのようでもない熟した中年、それが逆に生々しく、リアル。時々、幻想として全裸になり小道を歩いたり、雪のなかに立っていたり、3人の男に囲まれたり、それは更に欲求を満たしたい自分の心の中の風景なのか・・・

マリークレールは次第に壊れていき、研究から逸脱し、夫や子供たちとの関係も危うくなっていく。夫に、'満足した日には、それ以上欲情してはダメなのか?' と聞くが、これが映画の最大のテーマなのだと思う。

日本には、カナダ映画の輸入数が少ない。
カナダの英語圏において著名な映画監督はデヴィッド・クローネンバーグ、アトム・エゴヤンあたり。だから本作のような異色だけど、フランス語圏カナダ製の監督作品を観れたのは貴重かなと思った。
Benito

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