Benito

ストリート・オブ・クロコダイルのBenitoのレビュー・感想・評価

4.0
【 圧倒される幻想的なクエイ兄弟ワールド 】

スティーブン・クエイとティモシー・クエイ兄弟の代表的作品。

本作でコマ撮りしたストップモーションアニメの被写体となったのは、朽ち果て汚れた人形、ネジ、ゴム、糸、時計、生肉など…そして精緻なセットの数々。

暗くて寂れた街角
紐を切られて解放された人形
怪しげな光を放つ目玉
壊れた肩から腕を回転させルイ人形
踊り出す金属ネジたち
鰐のオブジェ
怪しげなライティング、奥に広がる暗闇

様々な奇妙なシークエンスが繋がっていくという何もかもがクエイブラザーズの真骨頂。凄く細かい作業の連続で、小さなものを器用に構築し、相当根気強く製作してきた熱量がひしひしと伝わる。不気味さと幻想的なものが同居してる。

ポーランドの作家の「大鰐通り」が原作で、エンディングにはフレーズが朗読されてディストピアの様相を感じさせてた。

そして機械パーツの駆動する音や、独特な劇伴など、音への繊細なこだわりも凄い。
「前奏曲:木製の食道」って最初からシュールだった。リバーヴのかかった弦楽器演奏から、中盤パーカッション音も入り、カオス的なバイオリンサウンドが続き、最後は悲しげな旋律が流れる。参った!

<参考>
クリストファー・ノーランが選んだクエイの3作品について
 「IN ABSENTIA」(2000 年)
 「THE COMB(櫛)」(1991年)
 「ストリート・オブ・クロコダイル」(1986年)
この3本は2015 年 8月 19日にニューヨークのフィルム フォーラム劇場でノーランの「Quay」が初公開された時に同時上映されていた。その1本が本作「ストリート・オブ・クロコダイル」
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