このレビューはネタバレを含みます
自分に才能や能力がないことに気付いたとき、
自尊心や承認欲求が満たされないとき、
大衆に埋もれそうになり息苦しいとき、
それを認められず耐えられずもがく様が何通りも描かれている話だと感じた。
他者を羨み、攻撃し、批判を無視し、賛辞だけ享受する永田。
他者を甘やかし、求められることに安心を見出す沙希。
夢を諦め、違う道で自己実現しようとする青山。
自分を客観的に捉えて妥協する野原。
自分を保とうと必死で、夢や人に依存して、自分や周囲を壊してしまうこともある。
挫折や敗北を経験したことのある人間には、痛いほど刺さる作品だった。
グータンヌーボ2で、又吉さんが一番長く付き合った人の話をしていた。
22歳で原宿を歩いていた時、熟す前に落ちた青い実を同じように見ていた女の子を追いかけて、
「明日遊べる?」
と、生まれて初めてナンパをしたらしい。
この人やったら自分のこと分かってくれそうやな、と思って。
一度は断られたが、あまりにも挙動不審だったので、大丈夫ですか?と、コーヒーを一杯奢ってもらったそうだ。
永田と沙希の出会いは、それが元になっているのかもしれない。