Mikako

劇場のMikakoのレビュー・感想・評価

劇場(2020年製作の映画)
3.5
終盤「人の話し聞かれへん病やねん」と謝る永田に、友達がわかってるよと冷笑するシーンが好き。クズな永田を周囲が全否定しない、それがこの映画の優しさな気がしました。

終始うだつが上がらずフラフラと、一見不幸であるかのように思い悩みながらも己のやりたいこと以外には徹底して手を付けず自分の理想を思い求める永田は、とても貪欲で幸せな人間だと思いました。
一方そんな永田に寄り添い、優しく彼を信じる沙希もまたとても幸せだったのに、彼女の幸せは途中で変わってしまった。
変わりたくない永田と、変わりたくなかったけれど自然と変わってしまった沙希。2人を隔てたのはなにか大きな事件ではなく、2人でいることが"無理になった"という点がとてもリアルに感じました。

沙希は強くて優しいのにちゃんと弱さやズルさもあって"男性の理想像"的な女性ではあるけれど"童貞の理想像"とは一線を画している点に好感を感じました。

永田の幸せは舞台の成功ではなく己を貫くことにあるのではないかと思うので、あのラストは舞台が成功した=ハッピーエンドではなく、ただ沙希を笑わせたかったという永田の願いなのか?

とてもモラトリアムで切ない、けれど恋愛の幸せに満ちたラブストーリーでした。
Mikako

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