AkikoNakayama

劇場のAkikoNakayamaのレビュー・感想・評価

劇場(2020年製作の映画)
4.6
東京で夢を追って生きる主人公と、彼を支える恋人・沙希を描く。主人公を取り巻く人々の衣装、言葉、視線の変化が強調される一方、主人公のあり方は淡々としたモノローグから風貌まで何ひとつ変わらない。沙希と主人公が暮らす部屋は、こうしたいびつさを象徴する舞台だ。長すぎる二人の関係を表すように、閉め切った部屋は次第に不安定なカメラワークと暗い画面で描かれるようになる。繰り返される「いつまで保つだろうか」というモノローグとあいまって、育ちすぎた蛹が内側でじくじくと腐るような不穏さだ。寂寥感を抱えて迎えるラストには、蛹が羽化するかのような仕掛けが待ち構える。モラトリアムの葛藤をこれでもかというリアリティで描き、静かな高揚感にあふれるラストが胸に滲みる作品。
AkikoNakayama

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