律

ブラック校則の律のレビュー・感想・評価

ブラック校則(2019年製作の映画)
2.7
最近見た映画作品の中では最も良くなかった…作品として成立しているのかすら疑問だった。フィルマークスの評価が3.9だったから期待して見たけれど、見終わったあとに他の人のレビューをチェックしたら大抵「ジャニーズ映画なのに社会問題扱ってたからよかった」みたいな形骸的な評価しか見当たらず、社会問題を扱ってみたその先に見た人は何を得たのか、この映画はじゃあ社会を変えられる力を持つのか?みたいなところがあまり言及されていないように感じた。
まず、「好きな子に学校に来て欲しい」だから「校則を変えたい」という話なのに、結局学校という権力の中でルールを遵守することによって最後マオが学校に来ることになったのがおかしいと思った。この2つのポイントは作りようによってはきっと両立出来るはずなのに主人公の思想が終始ブレブレというか結局どこにあるか分からない。
ブラック校則というタイトルにするのならば、なぜ理不尽で強制的な校則がたくさんの学校にあって、それが罷り通っているのかという点について社会構造的な視点から切り込むべきだったし、チョイ役にすら薬師丸ひろ子を使えるぐらいの予算がある松竹の映画ならば予算にも注目度にも恵まれているのだから、このように中途半端な作品を世に出すべきではなく、もっと大きな企業から出る映画として果たすべき社会的責任があったのではないかと思った。
最近SNSでバズったことを切り貼りしただけの映画にも見えた。ラップ、ウォールアート、タピオカetc… 特にラップに対するリスペクトは終始感じられず不快だった。ただ映画をなんとなくかっこよく、なんとなく話題性のあるものにするために使っている感じしかしなくて、ラップという音楽文化がどう社会の中で根付いて人がものを伝える手段として使われているかという立体的な事実がまったく描かれておらず非常に配慮にも教養にも欠けた使われ方だった。外国人肉体労働者の描写に至っては個人的になかなか差別的というか侮蔑的に感じられ令和元年にこんな描き方を松竹が出していいのかかなり疑問であった。
題材やキャストはいいのだから絶対にもっといい作品にする余地はあったはずなのだが脚本の言い回しなどにもかなり古さというか1人の脚本家の価値観が突っ走っているという印象がありちぐはぐだった。
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