ヤマダタケシ

これは君の闘争だのヤマダタケシのネタバレレビュー・内容・結末

これは君の闘争だ(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

2021年12月 イメージフォーラム

・ブラジル。バスの運賃値上げへの反対運動からはじまり、公立高校の予算削減から廃校への抵抗闘争を追ったドキュメンタリー映画。
・今作、印象的なのがサンプリング的な手法である。運賃の値上げ、公立高校の廃校。全く違う問題に見えて実は一続きの出来事に対し高校生たち手動に行われてきた反対運動を、今作は三人の人物のマイクリレー形式で視点を変えながら話していく。性別や人種、所属する団体など異なる三人が同じ活動について語ることは、それぞれのアイデンティティ的な視点から活動を見ることであって、同じ出来事であっても、視点が変わるごとに時間が何度もPLAY BACKされ、異なる視点からの証言が出てくる。時系列を動かし、スマホで撮影された映像やニュース映像、様々な形での映像を組み合わせた今作のサンプリング的な感覚が印象的であった。
・デモの中に音楽や詩、ダンスなどのユースカルチャーが含まれた活動自体がサンプリング的な感覚で繋がれることはとてもカッコ良いのだが、今作がサンプリングな事は、この作品を誰かの視点から描いた物語としてでは無く、様々なアイデンティティ、事情を抱えて暮らす人々の群像として、立場が違う人々がひとつの不正義に対し共闘して行ったものだとしてこれを描いている。結果として、反対運動に関わる様々なスタンスを見ることができるため、よりスクリーンの前にいる自分のスタンスとして反対運動、それが戦っている公共の市場化と向き合う感じになる。
・占拠した学校の中での共同生活が、ひとつの民主主義の在り方の模索になっているのが面白い。そこでの多様性の実践みたいな感じがとても印象に残った。
・冒頭、機動隊に頭を殴られ意識不明になった女性の映像が差し込まれる。その血を流した少女と回りに集まる生徒達の姿がショッキングであると同時に、救急車が到着するまでの実際の時間の長さが映画の長さの中にも組み込まれる。リアルに彼らが対峙している暴力のキツさが感じられる作品でもあった。