ジャッキー程のスピード感はないものの、外連味と可笑しみをリズミカルに挟みながら、あえてのヒップホップに乗せたカンフーアクションが楽しい。特に、スーパーヒーローと公共交通って本当に相性がよくて、公道走りっぱなしのバスの中で、乗客も運転手も野次馬も全員参加のお祭り状態。香港映画の良さを残しつつ、マーベルのフィルターによって、よりスタイリッシュに整理された感じ。
家族の内輪バトルのシーンでは、家族同士のバックグラウンドがぶつかり合う。キレの良さだけではない、体を巡る気の流れが可視化されたかのような体捌きが、ドラマチックで美しい。駐車場係役で一作品全うしそうな主人公の見た目や、東洋のウーピーゴールドバーグみたいなヒロイン像も相まって、MCUに新鮮な風を吹き込んでくれた。永野芽郁と片桐はいり足して割ったみたいな妹さんもかっこいい。全体的にキャスティングに突っ込みたくなるのは、多様性への配慮に手をつけ始めたマーベルの、やや歪んだ東洋観によるものなのか。
