鴨橋立

ハロウィン THE ENDの鴨橋立のネタバレレビュー・内容・結末

ハロウィン THE END(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

観終わった後、世間的な低評価に少し困惑。

"期待外れ"と思われてるファンの方が多いようだが、自分にはデヴィッド・ゴードン・グリーン監督による三部作は、シリーズへの愛に溢れ、なおかつその可能性を広げた三部作に思えた。

ストーリー的には78年版の1作目からしかつながっていないが、前作KILLSでは『2』の舞台となる病院や、『3』のマスクが登場したり、そもそもローリーの娘や孫という設定は『4』~『6』にも登場する。

前作KILLSの地下室というモチーフやマイケルが6歳まで過ごした家に帰ってくるという展開は『レザレクション』とも共通し、ブギーマンの後継者は『4』のラストでジェイミーちゃん(パラレルワールドのカレン)がそれっぽいことをやっているが、今回初登場するコーリーのキャラクター造形はどことなくロブ・ゾンビ版のマイケルも連想させる。

また少し強引だが、今作冒頭のようにローリーが過去の怒りや悲しみを自身の内に封じ前向きに生活する姿は、名前を変えて生活する『H20』を思わせる。

18年版の終盤がそれまで散々な目にあってきたローリー 一家を思うとそれはそれは溜飲の下がる展開だったこともあり、今回のラストバトルの過去映像の回想はエブエブよろしく全ての世界のローリー 一家の映像コラージュでも良かった気がするが、流石に観てて混乱するか…

また今回の新三部作が広げた可能性については劇中で78年に起こった事件がローリーをはじめとするハドンフィールドの住人にどういう影響を及ぼしたかについての物語という点。

18年版では心に消えない傷を刻まれたローリーが家族や周りからは狂人として扱われていた。

KILLSではそこから反転してハドンフィールドの住人がマイケルへの恐怖から狂人と化し、結果的に罪のない命が失われた。

今作では18年の事件から一年が経ち不幸な事故を起こしてしまったコーリーに対して、かつての自分たちの罪を忘却するかのように新たな狂人(サイコパス)として扱っているように見える。

今作でコーリーに攻撃的な態度をとる少年少女たちの親の中にもあの夜病院で犠牲になった彼を追い詰めた者がいたかもしれないと思わずにはいられない。

新三部作は恐怖そのものから恐怖の及ぼす影響にシフトしたことでスラッシャー映画に収まりきらない、より普遍的な物語に到達している。その分そういうのはいいからスラッシャー映画が観たいという人たちには不満があるのかもしれない。

そういった点は抜きにしてもマイマイファンとして前作の激闘で満身創痍の状態になり下水道に潜み後継者を待つマイマイには萌えたし、コーリーが二代目として初仕事に挑むシークエンスの”大丈夫か?”といった流れから優しくアフターケアしてくれるマイマイには思わず顔がほころんだ。

そんな初仕事では頼りなかった二代目もマイマイからマスクを強奪し本懐を遂げる頃には十分立派にブギーマンしてて、コレもアリ!と思えたし、そして何より、修行の末ブギーマン殺法を体得したローリーVS二代目のバトルは少年漫画的にアツいカードだった(このバトル前に事件のあった家でさらっとブギーマン殺法”いつのまにか居ない”を披露するローリーにはシビれた)。

積み重ねてきた時間の差によって肉体的には勝利するものの二代目のイタチの最後っ屁により精神的に敗北したローリーが、その後、同じく満身創痍で引退寸前のマイマイと繰り広げるラストバトルはもう感涙。

前作でマイケルは殺せないと言っていたが文字通り”死ぬ程物理”なやり方で葬るのは流石に笑った。

がしかしラストでローリーがマイマイのマスクを捨てずに持っている所を見ると確かにあれでもまだマイマイは殺せていないのかもしれない。

春のハロウィン祭りと銘打ったイベントのトークショーで高橋ヨシキさんが「最後に町の住人が急にぞろぞろ出てくるんですよね」と仰っていたが、

もしかするとハドンフィールドでは10月31日ははしゃがずに家にいなければいけない文化がKILLS から今作の間の4年間でできあがったのかもしれない。

その代わり31日より前にアリソンたちも参加したようなクラブイベントが散発的に開催されつつある状況なのかも…?このへんはなんだかコロナ禍後のイベントの再開を思わせる。

唯一不満があるとすれば日本での公開タイミング。

作品を観終わった後であれば昨年のハロウィンに公開しろとは言わないが、あと一か月遅かった。

3月半ば頃に公開して、ジェイミー・リー・カーティスが来日して花見でもしてくれたら完璧だったのに。エブエブ許すまじ。。

あとまあ比較的どうでもいい日本の宣伝的なとこで、キャッチコピーの「恐怖が、壮絶に、終わる」はおそらく『ダークナイト ライジング』のコピー「伝説が、壮絶に、終わる」のオマージュで、『ダークナイト ライジング」冒頭の肉体疲労の蓄積によりバットマンを引退したブルース・ウェインとボロボロで下水道に潜むマイマイを重ね合わせてつけたコピーかと思われる(『ダークナイト ライジング』で下水道に潜むのはヴィランのほうだが…)。

その後、再度バットマンとなったブルース・ウェインは背骨を折られるがマイマイはそれどころでは済まなかった、というね。

いやぁ大満足な3部作でした。
鴨橋立

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