おーもり

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーのおーもりのレビュー・感想・評価

3.3
こんなにしんみりしたタイトルロゴない。
ティチャラ王、チャドウィック・ボーズマンとのお別れ会ともいえる作品だった。
それに加えてワカンダ王国、シュリに対しての過酷な追い込みが容赦ない。観ているのも少ししんどさを感じる位に喪失が重なっていく。

比べるのは間違っているけど、ワイスピ スカイミッションがよぎる。
スカイミッションはそらもう号泣した。劇中でその役を故人にしなかったのも良い。今作は深くは語られないが故人として悲しみを観客と共有しながら話が進む。
どうしたって普段のMCUのエンタメ大作の雰囲気にはならない。正直、全体的な印象としては期待値を超えなかった。

敵として登場する海底王国との対立。今作のティチャラ王を亡くした悲しみとどう向き合うのか、って大テーマとあまりシナジーを起こしている様には見えなかった。ネイモアの心情とか、シュリとの駆け引きとか、長く感じた。白状すると、ちょっと寝た。
何百年か前、エターナルズの面々は居たという事実を知っているだけに、気配も感じないのに若干いらつく。

本作初登場のアイアンハートも不遇だ。唐突で、しかも中途半端な活躍で、都合いい。どうしてもアイアンマンと見比べてしまうし、そのくせオリジンはトニースタークとは何も関係がない。
別に今回あえて登場させなくても良かったのじゃないか。

キルモンガーの登場のさせ方は腑に落ちた。どんな台詞よりも納得感があるシュリの今のメンタルを反映させた展開だ。人気だからって、キルモンガーを安易に次の主役に立てなかったのも好感がもてる。
シュリが誤った動機のままブラックパンサーを継承し、最後のとどめの瞬間まで突き進むから、改心するタイミングがすごく後になる。
追い詰められている彼女に、そんなすぐ折り合いつけろなんて酷だとは分かっているが、3時間もあるのだもの。物語を追いかけたいと思わせるには、応援したくなる気持ちが足りなかった。
エムバク、論破されて「うぅむ・・・」みたいに引き下がんな。

あと、戦の終わらせ方も気に入らない。
現実世界で戦争が起きている2022年、それぞれの国には生活している人たちがいて、どちらもかけがえのない奪ってはならないもの。という着地は良い。
でも、ついさっきまで殺し合いをしていたのに、トップ同士がお手て繋いで「戦いはや~~め~~~」って言って、万歳めでたしフォーエバーって。つい1分前に死んでいった同胞たちが可哀そうすぎる。
劇中の初「ワカンダフォーエバー!」もその前に無駄撃ちしてるし、あのタイミングなんだったのか。

エンディングの傾いた日差しと、静かな雰囲気の最後のお別れはめちゃくちゃよかった。
静かに故人を悼み、想いをはせる。演技を超えた、悲しみとさみしさが表情で伝わってくる。
もっとこのシーンに行き着くために、スリムにして語るべき葛藤や乗り越える理由を描けたのではないか、と思った。