つぁんは毒育ち

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーのつぁんは毒育ちのレビュー・感想・評価

3.0
今作『ワカンダ・フォーエバー』を受けて前作『ブラックパンサー』も見返しました。
前作は地味ながら平和や人類の団結を訴える良い話でした。
今作はさらなる資金を投じて映像だけは派手になっていましたが、あれこれ詰め込まれた要素がどれも印象薄く散らかっていて、正直作品としては無駄に長いと強く感じてしまいました。

ストーリーとしては彼らが戦う理由が弱い気がして、演出としては風刺の部分がちょっとしつこいかなと思いました。
長く耐えた割に終盤のバトルの盛り上がりがいまいちなのが最も気になった部分です。
前作くらいの長さに仕上げていれば、内容はともあれもっと見やすい作品になっていたと思います。
ボリュームがあって長い作品は歓迎ですが、ただ各シーンを長く展開をスローにしただけだと退屈感が勝ってしまいます。
面白い作品は短くても面白いし、そうではないものはいくら長くしようと面白くはならないと個人的に思っています。

有名レビューサイトを見ると前作のほうが現時点で既に高いスコアになっています。(スコアは作品公開後、徐々に下がっていく傾向にあります。)
Filmarksでは今のところこちらのほうが上ですが、ファンの方々の気持ちによって押し上げられていると思われます。何が人の心に刺さるかはそれぞれなので、今作のほうが上だと感じる人も決して間違っていません。私のように冷めきって機械化した生ける屍ではなく、追悼に共感する優しい人たちがこの国には多いのだと思います。


チャドウィック・ボーズマンが死去されて続編作りは大変だったと思います。
彼は晩年、おそらくがんがステージ4になってからも役者として撮影に挑んでいたはずです。
家族を似た病気で亡くした身としては、人生の終わりをすぐ近くに感じとっていたであろう彼が、この世で最後まで自身の痕跡を残そうと精力的に活動した事実に最大限の敬意を払いたいです。
彼の心境を想像すると自分の家族の最期の姿も重なり胸が張り裂けそうになります。作品を楽しむよりつらさが勝ってしまいます。しかし、人は誰もが必ず死ぬのです。恐れることも、先に死んだ者をあわれむ必要もありません。同じ時間を生きた友が先に旅立ったという事実だけがあるのです。そしていずれ、そう遠くない将来に自分の番がやってきます。
今後まだ見ていない彼の晩年の残りの作品を目に焼き付けていきます。死ぬまで生きた人を尊敬して見習います。
つぁんは毒育ち

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