柏エシディシ

ハリエットの柏エシディシのレビュー・感想・評価

ハリエット(2019年製作の映画)
2.0
結論から言うと、ハリエット・ダブマンという卓越した人物を描く映画としては力不足だと思う。
多くの方のご指摘通り、葛藤や障害を乗り越える「映画的」ハードルが比較的低い為、エンターテイメントとしても、映画のテーゼとしても弱くなってしまっている様に思う。
誇張して、過剰にしろ、という事ではない。
ただ、ハリエットの戦いとアフリカンアメリカンの歴史の困難をこの映画は描き切れているのだろうか、という疑問がどうしても拭えなかった。
もちろん信仰というものが、ハリエットや、延いてはアメリカにおけるアフリカンアメリカンにとって重要な存在であるということは間違いないけれど、「神の啓示」で困難が克服出来る程、事は容易では無かったのではないだろうか?
「神」無き、容赦の無い現実に、己の勇気と機転で立ち向かっていたハリエット自身の偉大さを本作では却って矮小化してしまっているように感じる。
それは私が、不信心者だからなのかも知れないけれど。

それでも。
ハリエット・エリヴォの歌唱は本当に素晴らしい。
そして、映画で掛かることの多いニーナ・シモンの"Sinnerman"、必然ながら本作での響き方は格がちがう。
奇しくもこのタイミングでの公開は大きな意味があり、ハリエット・ダブマンという、とてつもない人物の存在を多くの人に知ってもらう作品としての価値はある。
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