いきなり、嫁がメモを渡してきた。そこには
「あなたに描き続けて欲しかったのは1人にしない為、他者とつながるんです。自分の一部を与えるが人々もあなたとつながる」
と書いてあった。「映画の最後に流れた言葉よ」と、珍しく私に何かを伝えたい素振りだった。
嫁と一緒になって10.年このかた、「この映画は好きじゃない、あの女優はブスだ」とか罵る言葉は数知れず、しかし感想じみた発言をこれまで聞いたことはなかった。
およそ彼女は自分の内面を人に晒すことを好まない。他人から理解されなくても動じない。他人の理解を必要としていないのだ。
周囲の眼を気にしてキュウキュウとしている私からすれば、彼女の強さはうらやましくもあり、哀しくもある。
もし今回のことで彼女の中で何かが始まったのなら静かに見守っていきたい。