らいり

寛解の連続のらいりのレビュー・感想・評価

寛解の連続(2019年製作の映画)
5.0
最近ポエトリーラッパーの楽曲を収集に凝っているわたくしですがこの映画の存在を知ったのはちょうど一年前2019年6月に近所の小さなライブハウスでこの作品の上映会が行われる情報をキャッチしたのがきっかけでその時は入場券がソールドアウトで観る機会を逃してしまったのであるが、
この小林勝行というラッパーについてはさらに一年前くらいにたまたま神戸薔薇尻名義でI-Deaプロデュースのhere is hapinessをYouTubeで見つけ虜になり
その後もちょくちょくネットで彼の楽曲を検索しては音源を手に入れアーカイブ化するということをしていました。

ドキュメントの主犯格であり構成撮影編集をてがけた光永淳氏が「土着性」という言葉で彼の音楽を修飾しました。
「かっつん」のライミングには関西弁のアクセントが多分に混在しています。それは同じく関西出身のSHINGO☆西成のファニーさとはまた違った無骨だがかすれていてハートウォームなオーラを帯びた独自のブルースを感じさせるものですが彼が兵庫県神戸市出身であることとの関連は定かではない。
また従来ヒップホップが貧困差別と対峙する黒人系アメリカ人の発揚、自己顕示から事を発するもので、日本語ラップもその様式(ライミングから立ち振る舞い、仕草に至るまで)を直輸入したようなラッパーが目立つ中、小林勝行は
「一生中退ハイブリーチ」
「全員揃えた袴 仲ええ」
「考えとうから 中出しはナシ」
といった日本の地方にならどこにでもいる(いた)ようなマイルドヤンキーのステレオタイプを地で行くスタイルを一貫しています。

楽曲の話をはじめたりきりがないので映画の話をw

ラッパーの自伝でありながらあるセンシティブな事柄に踏み込んだ、それがこの作品の功績。それは精神/身体障害と創価。

創価学会というアンタッチャブルな存在を内部の視点から顕在化した表現者は小林勝行をおいて他にいません、彼はいわゆる学会二世で作品中では手を合わせ「南無妙法蓮華教」と勤行する姿が見られます。よくある二世だけど信仰はしてない、いまは脱退しているというパターンとちがい現役バリバリの学会員。
あろうことかカメラは学会支部の会館内まで足を踏み入れます。(御本尊がある部屋にはさすがに入れてもらえてませんでした。)
久本雅美ですらメディアで公に学会宣言はしてないのでこれはすごいことです。
ちなみに何度か御本尊をカメラが映すシーンがありますが、学会員的には本来絶対あってはならないことだそうです。(内部の友達談)そこもまたセンセーショナル。
リリックにちょくちょく仏教的モチーフが入るので、ああ仏教好きな人なのかなと思ったけどまさかの創価。
また小林勝行はそう鬱病を患っており、通院する姿や時には発作的に感情を昂らせる姿を見せます。
躁状態の時には一睡も寝ずに起き続け記憶がなくなり誇大妄想が激しくなるそうです。
いま思えば躁状態が産み出す誇大妄想と創価的仏教感の結実がLIBROと産み出した輪廻転生をテーマにした名曲「ある種たとえば」なのでしょうか。
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