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hisのpopcornのネタバレレビュー・内容・結末

his(2020年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

『愛がなんだ』が素晴らしくて、期待が大きかっただけに反動が。。。

映画的なことで言えば、流石に何でもかんでもセリフで(しかも直接的に)説明させすぎ。確かに主演2人ともキャリアがある訳ではないけど、もうちょっと信用して演じて貰ってもよかったと思う。2人とも佇まいは雰囲気あって良かったし。
卵のくだりは『クレイマー、クレイマー』のオマージュか。

ストーリー的なことで言えば、妻が可哀想すぎる。彼女は少なくとも渚との関係では100%被害者でよくあそこまで冷静で居られるなと思ったぐらい。酒に逃げてしまうシーンだって、空を叩いちゃうシーンだって、空以外の誰に彼女を責める資格があるのか。男性の自分ですら、彼女に一番共感(というか同情)してしまうんですが、特に働く女性から見て、まるで妻にも落ち度があるかのような本作の描写は許せるのか。。。

とにかく渚が徹頭徹尾未熟で身勝手で、最後まで成長する様子がない。どういう理屈で最後に親権を手放す和解を申し出たのかも分からない。尋問で責められてる妻が可哀想に思えたから?まさか"普通じゃない"っていう相手方代理人とか裁判官の言葉に屈したのか?
後者だとすれば本作のテーマと全く相反しているし、葬式後の迅の演説だって無駄になっている。前者だとしても、妻のことはもちろん、最も重視されるべき"子の福祉"が考慮されている様子も全く見えてこない。
もし法廷でのセリフのように本当に妻に感謝し、子どもと過ごす時間を作ってあげたいと思うのなら、なぜ東京近郊で働くなりして妻をサポートするのがファーストチョイスにならないのか。空だって、パパに近くにいて欲しい(皆で暮らしたい)と明確に言っていた。何で自分はそのまま岐阜に残ってるの?画面上に描写されているものからは「同性愛者である自分を受け入れてくれる土地で、迅と暮らしたいから」という理由以外に合理的に説明が付かないと思うんですけど、だとすれば最後まで自分本位過ぎませんかね。ラストだってハッピーエンド風だけど、結局は空、(元)妻、迅など周りの人に救ってもらってるというだけで、渚本人は何も変わっていない。(元)妻が母親に言っていた"今は甘やかしてやりたい"ってのは、もしかして空ではなく渚のことだったの?笑
愛に性別は関係ないということには微塵も異存はないけど、渚のような単に甘えているだけの人間も皆(6歳の子どもも含めて!)でサポートしてあるがまま受け容れてあげようよ、というのが監督の主張なら自分は流石についていけない。

あと映画的には細かいけど、訴訟では双方代理人とも酷くないか。問いですらなく代理人の見解を述べてるだけ、証人に意見を求め議論に及ぶ尋問、侮辱的な発言に加えて証人威迫まで、双方代理人とも最早全部の発問に対して異議出して良いぐらいなのに、幾らなんでもボケッと喋らせすぎだし、ちゃんと仕事してください笑。証拠もあの内容なら弾劾じゃなくて通常証拠として出さない?

同一テーマなら『チョコレートドーナツ』の方が遥かに優れた作品だと思うし、本作は同性愛を描く作品としても離婚や親子を描く作品としても、非常に中途半端。色んな問題をフラットに描きたいのかもしれないけど、全然そうはなっていない。
(男性同士の)同性愛なら『君の名前で僕を呼んで』『彼の見つめる先に』など、離婚や親子なら『クレイマー、クレイマー』『マリッジ・ストーリー』などと比較しても、全く成功してないと思えた。

作家にとって描きたいことが沢山あるのは良いことなんだろうけど、こういうセンシティブな入り組んだテーマはもっと丁寧に扱って然るべきじゃないのか。
mellowどうしようかな。。
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