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禁断の惑星のodyssのレビュー・感想・評価

禁断の惑星(1956年製作の映画)
3.5
【昔風のSF+フロイト心理学】

BS録画にて。
1950年代に作られたSF。
今から見ると、そのレトロ感覚がいい。
ロケットは空飛ぶ円盤型だし、ロボットはいかにも昔風の形をしているし。

ちなみに宇宙船という概念自体はウエルズの『宇宙戦争』の頃(19世紀末発表)からありましたが、いわゆる空飛ぶ円盤が(異星人の)宇宙船という認識が拡がったのは第二次世界大戦以降。
だから1950年代に作られたこの映画のロケットが空飛ぶ円盤の形をしているのは、時代の流れから、なんですね。

地球から遠く離れた惑星に降り立った人間たちは、20年前に先行してこの惑星を探検に向かったものの、消息不明になっていた「ベレロフォン」号の生き残りである博士とその娘を発見します。

ここでまた解説ですが、ベレロフォンというのはギリシャ神話に出てくる英雄の名なのですが、怪物退治をやってのけたものの、最終的には神々に挑戦して敗北したということになっています。先行して遠い惑星を探検に向かったけれど戻ってこなかった宇宙船の名にベレロフォンが使われているのには、だからそれなりの暗示があるのです。

そしてまたイドという概念が登場する。フロイトの超心理学の概念ですね。人間の無意識の中の意志を指すとされる。ちなみにイドidとは、ラテン語で英語のitにあたる代名詞です。

つまり、このSF映画は、1950年代の知的モードをそれなりに反映した作品になっているのです。地球から遠く離れた惑星になぜか美女がいる(博士の娘という設定ですけど)なんてのも、いかにも通俗的なストーリーのようではあるけれど、ちゃんと心理学的な意味づけがなされているのですね。

まあ、それやこれやで、比較的退屈せずに見ることができました。
最近のアクションやバトルに重きをおいた宇宙ものより、私にはこちらのほうが好ましいかな。
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