垂直落下式サミング

ふたりの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ふたり(2019年製作の映画)
3.8
大好きなあの人にとって、自分は大勢のうちのひとりにしか過ぎなくて、頑張って近づいてみるんだけど、どうやってもいちばん大切な人にはなれない気がして、アナタの言う好きと、ワタシが思う好きは違うとわかっているのに、関係の永遠性を期待して、でもそれは叶わなくて、傷付くことをやめられない。
そんな自傷的な孤独を繰り返してしまう。ずっと、このままなんてあるわけない。僕らは、いつもどこかずれてる。それがわかっていながら、好きにならずにいられない。そこが、たまらなく愛おしい。
編集の小気味よさが気に入った。着飾って会いに行くと決めたら、次の瞬間駅のホームで出会って、夜中の階段でダベるふたり。この間約3秒。短編だからってチンタラ間延びしない速度感で、会話もセッションのような打って響いて相手の音に被せていくようなリズムで、とてもよい。
映像作品として、さりげなく画面の色合に気を遣っているのが気に入った。思いではベタにモノクロ。色情の赤。暖かい気持ちの蛍光灯の黄色。幻想のような真っ白い日の光。洋服と化粧道具の散乱する6畳間。スレた女の乱れた部屋に、抽象的な絵画が立て掛けてある。壁に飾ったらもっといいね。エモい。
多彩な色合がいいなーって思ってたら、お絵描きしてる女の子が生まじめ系なお母さんに「パンダは黒でしょ」って色えんぴつを取り上げられて感性を否定されるエピソードが挟み込まれるから、はっとしてしまった。
これ、もしかしたら誰かの実体験かしら?別に試験じゃないんだからさ。赤いパンダもいいじゃん。うまいじゃん。そう言えるオトナになりたい。