地球の科学技術を現実からかけ離れて描いていないので、今この世界に怪獣が、ウルトラマンが現れたらどうなるかと言った点においては、リアルに描けていると思う。
また、過去作のエピソードを抽出し、一本の映画に再構築する手腕は見事だと思う。オムニバス形式にもなり得たかもしれないので、ストーリーに一本筋が通っている点は良かった。
一方でウルトラマン作品の醍醐味の一つでもある、夢のような技術、ガジェット、乗り物が全く出てこないので、そこに物足りなさを感じる。
そのようなファンタジー要素と、登場人物のどこかコミカルなセリフが相まって、独特な特撮の世界観を構築していたのが初代ウルトラマンの良さだったんだなと改めて実感した。
嘘を本当のように見せる工夫、醍醐味があったから、ウルトラマンのどこかコミカルなポーズや戦闘シーンも違和感がなかった、むしろマッチしていたのかなと思う。
その点、本作のウルトラマンの戦闘シーンに違和感を覚える。一言で言うとかっこよくない。
魅力的なシーンもあるけど全体的に盛り上がらない。エヴァでも、シン・ゴジラでもそうだが、緊迫した、または絶望的な状況下におけるあの台詞回しが良かったのであって、ウルトラマン作品の持つどこかゆったりとしたリズムとは合わない気がした。
毒蝮三太夫さんが一瞬でも出ていれば違ったかもしれない‼︎
その他、淡々とした会話シーンやどこか性的なショットなど一瞬冷めるシーンも気になった。
鷺巣さんの音楽は相変わらず素晴らしい。
特に日常シーン。エヴァでもシン・ゴジラでも、とにかく何気ない通勤シーンの音楽が個人的には一番ツボで、本作でも浅見登場シーン(しばらく背中だけを映したカメラワークも良い)でかかる音楽でテンションが上がった(一番テンションが上がったシーンは冒頭のウルトラQのテーマ。あそこが本作の最大の盛り上がりだったかもしれない)。
