マレーボネ

シン・ウルトラマンのマレーボネのネタバレレビュー・内容・結末

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

シン・ウルトラマン矢継ぎ早に出てくる怪獣・外星人のが大暴れする様子は単純にすごくワクワクした。童心に帰って楽しめる瞬間は確実に多い!けれど後半のメッセージには説得力がなくて「ほんとにそれ思ってる?」って感じだった。

童心に帰るっていう意味では本当に楽しめる作品だと思う。
怪獣や宇宙人のビジュアルは既視感・懐かしさがありつつも現代風にアップデートされていて、得体のしれないクリーチャー感が増してカッコよかったし、それらが発電所や市街地で暴れまわるのは「あーもうめちゃくちゃだよ」って思いながらニヤニヤ見てた。
ウルトラマンはかなりシンプルな造形だったけど、特撮でおなじみのモッタリ重量感な動きではなくて、CGっぽさを逆手に取った人外モーション丸出しの動きで、それがむしろ畏怖を感じさせてすごくよかった。
役者さんも、よく聞くと相当安っぽいセリフでも終始カッコよく演じられてたので、かなり観やすい映画だと感じた。
山本耕史さんは何もかも最高だったね。めちゃくちゃよかった。

一方ですごく納得いかなかったのは、ああいう脚本の流れや口で言ってるメッセージの割に、シン・ゴジラで描かれてたような人間や社会への強い肯定感がほとんど感じられなかった点。

個人や国程度の力では到底及ばない圧倒的な事象に対して人間は絶望しがちで、それをがんばって乗り越えるっていうシナリオは、個人的には真理だと思うし何度繰り返しても響く普遍的なものだと思うんだけど、シン・ゴジラであれだけノリノリでやってた“組織やチームという社会の単位の中で個々が役割を果たすことで総体として乗り越える”っていう過程がシン・ウルトラマンではほとんど描かれてなかったよね。

ウルトラマンが敗北し、人類が決起して集結する大事なシーン。あの局面で実際に流れるのはVR会議のシュールな映像のみて、さすがに酷くないか。(しかもなんでPSVRやねん)

それでやっと捻り出した案がウルトラマンを犠牲にせざるを得ないものだった、ってそれ自体はいいんだけど、もっと悔しがれよと。

あそこで死ぬほど努力して、それでもウルトラマンを頼らざるを得ない答えしか出せなかった、なんて非力なんだ!悔しい!
こういうところにウルトラマンが愛した人類の未熟さがあるはずなのに、そこは全体的にかなりあっさりスルーするんやな、という。
(一応室長が「犠牲はいくない」って言ってたけど)。
あまつさえところどころギャグを挟んだりしてて、真面目にやってる感がほぼほぼなかった。

こんな感じなのにラストでゾフィーに人類の知恵と勇気が……とか言われても説得力がない。メッセージに一貫性がないよ……。
これじゃうちのウルトラマンが馬鹿みたいじゃないですか……。

そもそも現実でも作品内でも総体としての「人類」を語るってもうかなり無理がある時代だと思う。

すごくうがった失礼な見方だけど、やるなら真剣にやらないとTwitterで「女性は〜」とか「若者は〜」みたいな雑にまとめてお人形遊びするのと本質的に同じになってしまう気がした。

自分は総体を語るより、個人の思いの強さみたいなのを描いた作品の方が自分は好きだな。


あと、何でもかんでもクリエイターに紐づけて語るのは恥ずかしいことと思いつつ思い出を書くんだけどさ、Q公開後にシンエヴァがどうすんの……っていう状態で公開されたシン・ゴジラを観たとき、すごく嬉しかったんだよね。
社会について、批判はあるにせよそういう仕組み自体を有益なものと捉えてて、それを成り立たせてる人間をすごく肯定的に描いていて、シンエヴァも絶対ハッピーエンドでエンタメとして完結するって確信したし、概ねそうなったと思ってる。
けど今回の組織やSNSの描写を通じた人間の描かれ方を見ていると、どうしても「口ではそう言ってますけど、本当に思ってますか?」ってなんとなく心配になってしまうなあ。

山本耕史さんは最高でした。
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