きゅうげん

ワーニング その映画を観るなのきゅうげんのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

ほんとにあった『ほんとにあった! 呪いのビデオ』かと思ったら、『OUTLAST』×『女幽霊』に!
なかなか下火になることのないファウンド・フッテージものですが、本作はそこに“映画制作”という要素で、メタ・フィクションや入れ子構造(本来的には異なる意味ですが、便宜上そのように言える趣向)を加えようとした一品。

しかし、その一切が機能的ではありません。
この手のホラーは、重層的な構造によって私たちと映画との距離感・認識をも不安定にさせることがミソなのに、そこにはあまり注力しないため、拡大できる可能性を残した小品に押しとどめられている印象です。
それへ与しているのがサスペンス、とくに映画制作をめぐる過去と現在とをつなぐ展開としてのボンヤリさ。都市伝説的ホラー映画を追う序盤はいいのですがチン・ソンギュ演じる元映画監督の登場後、微妙に宙ぶらりんな真相と恐怖演出の意義が結びつかず持て余してる感じ。
ホラー映画に魅せられた、また苦しめられたという要素には、主人公のトラウマと絡めたナイスな試みの内容もあったのですが……。
そもそも制作の動機にパーソナルな問題を絡めるのは、こういう趣向の映画として悪手だと思います。
監督ふたりがトラウマをバネに頑張ったのは素晴らしいことですが、それを構造的にホラー映画へ昇華するのは如何なものでしょうか。「嫌な思い出があるから嫌なホラー映画を好きになる」ってのは別に全てじゃないし、ついでに言うと、こういう安易な姿勢が陳腐な作家論的・作家主義的な視聴を、意識的/無意識的に強制する端緒となるんです。

また、「世界で一番怖いホラー撮りたい」って言っても、グロ表現やジャンプスケアは正直にぶいし幽霊のキャラクター存在的な恐ろしさも薄味。今見せられてるものが空前絶後に怖いかと言われたら、まぁそんなこたぁない。
てか、「いわくつき映画があるらしい」という噂を確かめるのと、自身の作品制作とがシームレスになっちゃったら、クリエイターとしてダメだろ!
てかてか、最初と最後にでてくるヒゲ、共同制作なら脚本作業を一人に丸投げするな!!!

ところで、ソ・イェジの「芸術学科の先輩感」はすごいです。いるいる、こういう人。
長い髪かきあげる癖とかずり落ちそうな眼鏡とかかっこかわいいです。後輩との関係もキュートですが、……しかしだからこそのラスト……!
それとお隣でもやっぱりノーランは映画オタクの議論の種なんすね。